INDEX
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横目流し目 100万回生きられなくても
谷川俊太郎さんが亡くなりました。92歳だったそうです。僕は谷川さんの大ファンで、谷川さんの詩や本をずいぶんたくさん読んできました。最初の詩集「二十億光年の孤独」が出たのは1952年のこと。僕が生まれる前のことです。谷川さんは僕がまだこの宇宙に存在しなかった頃から、すでに言葉の宇宙を生み出していたのです。僕が「二十億光年の孤独」という詩をはじめて読んだのはおそらく中学生の頃のこと。標題を入れてたった17行の詩が宇宙を語り尽くしていると思ったことを記憶しています。
万有引力とは
引き合う孤独の力である
この言葉に、僕は徹底的にやられてしまったのです。そして
二十億光年の孤独に
僕は思わずくしゃみをした
宇宙の中に僕はいるのです。孤独かもしれないけど、誰かを求めているのかもしれないけど、この宇宙に僕は必ずいるのです。
もう1冊大切にしている本があります。佐野洋子さんの「100万回生きたねこ」です。100万回死んで100万回生きたネコは1回も泣いたことがありませんでしたが、本当に愛することを知って、愛するものを失った時に、心底から泣きました。そして死に、二度と生き返らなかったのです。愛を求めて100万回も生き続けてきたのです。
谷川さんと佐野さんはかつて夫婦だった頃がありました。たった6年だけだったけど……。2人は孤独で、お互い引かれあったのだろうな。万有引力が働いたのだな。だけど結局は孤独だった。そしてくしゃみが出る。で、別れちゃった。「咳をしても一人」って言ったのは尾崎放哉だったかな。みんな孤独なんだなと思わずにはいられません。宇宙の中で、地球の上で、何十億という人の中で生きているのに、人は孤独なのです。生きれば生きるほど孤独になる。
だったら100万回生きられなくても、この人とならという人が現れれば、幸せに生きて死ねるんじゃないかと思います。谷川さんはようやくあちらで佐野さんに巡り会えたかもしれません。どんな話をして邂逅を楽しんでいるでしょう。そんなことを思った谷川俊太郎さんの訃報でした。
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Prof.田川の揺れる音楽道 #73
BALLAD
https://www.youtube.com/watch?v=Y2YfNqNjEEM
Ballad Where Music Weaves a Tale
A solitary note stirs memories from the depths of one’s soul, illuminating a dim corner. Sounds intertwine, forming a melody that can seep into a person’s heart and revive a withered spirit.
バラッド 音の物語
ひとつの音が心の奥底に眠る記憶を呼び覚まし、淡い光を灯す。音が音を紡ぎ旋律が生まれる。それは誰かの心に染み渡り、枯れた心に再び花を咲かせるかもしれない。
音楽:田川文彦
写真:清水哲男
制作著作:清水哲男事務所
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清水哲男のサンクチュアリ
赤玉 金劇パシオン店@片町1丁目, 金沢市
日本全国どこの居酒屋に行ってもほぼ必ずあると言ってもいいのがおでんではないだろうか。そして大概それぞれの街にそれぞれの味があり、ご当地おでんというものがあり、それを代表するような店がある。金沢にも何軒かそういう店はあるが、僕のお気に入りはここ赤玉・金劇パシオン店だ。
店構えも店内も大衆感抜群でとても落ち着ける。本店が休みの日で、並ばないといけないかもなと思って出かけたが、カウンターが空いていてスッと入れた。その直後から立て続けに来店者があり、あら、ラッキーだったなと胸を撫で下ろす。
まず飲み物を頼んで、それが出てくるまでに何を食べようかと考える。おでんのメニューとにらめっこするも結論は出ないので盛り合わせを頼むと「地元の方ですかと」。旅行者だと答えると「じゃあ金沢らしいものを」と言ってくれた。で登場したのがこれ。
はべん(150円)たまご(150円)ちくわ(160円)えび天(250円)ごぼう天(250円)くるまふ(250円)ロールキャベツ(250円)大根(290円)れんこん団子(290円)たけのこ(290円)肉いなり(290円)。これがひと鉢に盛られて出てくる。2500円前後というやつだな。銘々の皿には出汁が張られて出される。出汁は関西風に近い。少々甘いめで優しいがしっかりした味だ。他に刺身の盛り合わせ(2500円)、金時草の酢の物(450円)、小坂れんこん天ぷら(700円)を。酒は奥能登珠洲の宗玄見附島(600円)を被災地応援の意味も込めて。頼まなかったけどワインをソーダで割った赤玉パンチにはちょっとそそられたな。いずれにしてもお手頃の価格で、どれを食べても飲んでもうまい。混んでいるにも関わらず、注文して料理が出てくるまでそんなに時間はかからない。しかも店員さんが元気でいい笑顔をしている。慌ただしくなるほど元気が出るようだ。見ていて気持ちがいい。
しばらくしてそんなに狭くない店内は満席になった。さらに外には入店待ちの客が何組かいるようだ。そろそろ席を空けないとな。常連さんたちは空気を読むのが速い。そそくさと皿を返しグラスを空け席を空けていく。それでは我々もということで席を立ち次の店に向かうことにした。
赤玉 金劇パシオン店
石川県金沢市片町1丁目7-23
営業 17:00-23:00(LO22:30)
定休日 水曜日
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揺れて歩く人々の問い vol.86
10年前、あなたは何を考え何をしていましたか?
写真は鹿児島の飲み手なら必ず知っている騎射場の鳥料理の店アサヒ。10年前僕はよくここで飲んでいました。でもこの写真を撮った直後に店じまいしていしまいました。僕はここで酔っ払いながら、これから先の10年どんなふうに生きようかと思っていました。僕は今、自分が思い描いていた10年後を生きているのかな……。そこであなたにおたずねです。10年前、あなたは何を考え何をしていましたか?
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C.Hさん
母の介護が自宅では絶対に無理な状態になって、精神病院を経て介護施設に入所させることができ、「雨でも嵐でもきっと3日に一度は来るからね」と約束して食事介助や部屋の掃除をしていました。それと並行して音楽活動も続けていましたが、パニック障害が悪化してとても辛い毎日でよく泣いていました。まだ精神科に行くことに抵抗があった時期です。
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T.Kさん
色々あって仕事を辞めて一年。遊んで暮らす毎日でしたね。遊ぶと言ってもなんにもない村ですから、日がな1日ラップトップに向かってネット空間を彷徨うか、散歩することぐらいしかない。Gwanさんと出会う1年前です。まさかこうやって一緒に歌い歩くとは夢にも思ってない😅
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M.Fさん
10年前は娘の高校受験で四苦八苦してた頃ですね。塾の三者面談で進路を決めるとき私の飲み会続きで1カ月程遅れ。その間にぐんぐん成績が上がり無事に志望校のランクがアップ。本来の日に進路決めていたら違う学校狙ってただろうから「お母さんが酒呑みでよかったなぁ」と言うと娘が苦笑いしてました。
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今回コメントを寄せていただいた方、ありがとうございます。詳しくはこちらをどうぞ。
https://www.facebook.com/tetsuo432/posts/pfbid038Q5b1wpuQGH37dfUk5UtetcMefnANy7X49MeCQFKUZtkUmVZA62CwhhrzWEu26CMl
次回87回目の問いかけは、「今年中に片付けておきたいことはありますか?」です。〈揺れて歩く人々の対話テーブル〉でのご回答よろしくお願いします。
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しみてつコラム
はまり役
『鬼平犯科帳盗人索引』なるものをつくりはじめた。文春文庫版「鬼平犯科帳」全24巻に登場する盗人の名前をすべて拾い出し、何巻のなんという挿話に登場するのかをまとめているのだ。さらにその生い立ちや盗人歴、本格の盗賊か凶賊か、そんなことまでまとめようとしているのだ。誰かに頼まれたわけではない。こういうものがあれば、小説を読み進めていくのにもわかりやすいし面白いだろうなと、そう思っただけなのだ。暇なのか!? いやそんなこともない。ただ、空き時間に何もせずぼうっとしているのがもったいないなと思っただけなのだ。とてもゆっくりしたペースで進めている。
1巻に6話とか7話。多くて8話だ。それでも4、50人の盗人が登場する。やりはじめて改めて思った。「鬼平犯科帳」の本当の主人公は盗人たちなのだ。鬼平たち火付盗賊改を経糸とすれば盗人たちが緯糸となり様々な物語が織り上げられていくのだ。もちろん密偵はもともと盗賊なので当然含めていた。
根底にあるのはヒューマニズムだ。凶賊墓火の秀五郎は言った。「人間という生きものは悪いことをしながら善いこともするし、人にきらわれることをしながら、いつも人に好かれたいとおもっている」(『谷中・いろは茶屋』文春文庫第2巻)と。それは「人間というやつ、善事をおこないつつ、知らぬうちに悪事をやってのける。悪事をはたらきつつ、知らず識らず善事をたのしむ」(同)という鬼平の言葉に重なる。善悪は同じ人間の表裏をなす側面なのだ。
この件をはじめて読んだ時、僕はなぜか火野正平という俳優の顔を思い浮かべた。プレイボーイ、女泣かせと噂された当時の規範に従わない生き方、それに芸名の名付け親が池波正太郎ということがあったのかもしれない。僕は密かに火野正平にテレビの鬼平で盗賊役を演ってほしいなと思っていた。が、同じ池波正太郎原作の「剣客商売」で*土崎の八郎吾という憎めない盗人を演じたことはあったが鬼平への出演はなかなか叶わなかった。
それが新しい鬼平シリーズで相模の彦十というなくてはならない存在を演じることになった。本人も池波作品にレギュラーで出演したいと希望していたという。ようやく念願が叶ったのだ。松本幸四郎の鬼平に火野正平の彦十。新しい鬼平像を支えるいい配役だと思った。「本所・桜屋敷」「でくの十蔵」「血頭の丹兵衛」と3作を見て、ああ、肩の力が抜けた悪戯っぽい彦十で、しかも艶っぽくていいな。正平さんにぴったりだとこれからを期待していた。なのに……。
『鬼平犯科帳盗人索引』に「TV・映画演者」の欄をつくった。小説の世界の話に終始しようと思っていたのだが、方針を変えた。真っ先に相模の彦十のその欄に、江戸家猫八、長門裕之、そして火野正平の名前を入力した。それに変わる俳優の顔を思い浮かべようとしたが、誰も思い浮かばなかった。
*土崎の八郎吾 TV「「剣客商売」シーズン2
第5話 『勘ちがい』
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