INDEX
- 横目流し目 ダサい未来へ
- Prof. 田川の揺れる音楽道 #72
- 清水哲男のサンクチュアリ 井倉木材店
- 揺れて歩く人々の問い vol.86
- しみてつコラム「みんなどこに行ったのだろう」
- ご購入のご案内
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横目流し目 ダサい未来へ
今日は朝からアメリカ大統領選挙の話題に巻き込まれています。平生政治に関心なんかないよという顔をしたいた人までが、新聞だかテレビだかネットだかどこで拾ってきたのかわからないようなデータとか話をベースに、いろんなことを話し合っています。そのほとんどの声がトランプ氏が勝ってがっかりしたというふうなものです。ちょっと声に耳を傾けてみます。
A君「あ〜〜やだ。アメリカはこんなことでいいのか?」。
いったい「どんなこと」に心配しているのでしょうねえ。
B君「こんな下品な人が大統領になるなんて。アメリカはとっても下品になるんじゃないか!? 有権者の見識を疑うよ」。
日本にだって下品な政治家はいるし、よその国のことを言ってる場合じゃないと思いますけど。
C君「アメリカは間違った選択をしたな」。
では、ハリス氏なら正解だったのでしょうか?
ひとつ感じるのは、過日の衆議院選挙の直後僕の周辺で結果をめぐってこんな会話が巻き起こったかというと、そんなことはありませんでした。ほとんど「思ったとおりだ」というようなものでした。何が思ったとおりだったのでしょうねえ。いずれにしても今回の大統領選挙に関してはみんな評論家のように、「私は世間を知っています」という顔をしていろんなことを言い合っています。この国の選挙、政治についてももっと盛んに議論し合えるといいのになと、すごく思いました。
そんなことをABCに言うと、3人はほぼ 口を揃えて言いました。「この国は与野党逆転や政権交代が起きても、本質は何も変わらないような気がするから議論しても虚しいだけだから」と。なんだかちょっと残念な気がしました。小さな議論が大きな議論になり変化に繋がるのになぁと。
そしてもっと残念なことがありました。なんとABCは過日の選挙、棄権したそうです。理由をたずねると「忘れてました」「行ったって僕の1票で何か変わるわけじゃないし」「面倒だし、ワンパス!」などということでした。さらに「政治に熱くなるってダサくないですか?」ですって。これには僕も驚きました。
僕らはどうあっても、君たちの世代が10年後、20年後の、あるいは未来のこの国の形を議論しないと、60代、70代、80代などという年寄りが勝手にどんどん決めていくよ。もっと積極的に関わった方がいいんじゃないかな。政治は有権者の大多数の声で確実に変わります。その大多数は一人ひとりの人が集まって大多数になるのです。はじめから大多数なんてあり得ないのです。だから声を上げることが大切だと僕は思っています。直接政治に届けるのが「1票」という声なのです。
ちゃんと声を上げて届けないと、君たちが嫌なもっとダサい未来に連れて行かれるかもしれないよ。「ワンパス!」なんて言ってる場合じゃないのです。
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Prof.田川の揺れる音楽道 #72
THE NEW MOON
https://www.youtube.com/watch?v=B7cE1AQT0eY
The new moon, a canvas painted in absolute darkness. This is the beginning, the moment before dawn. From the depths of this blackness, light emerges, giving birth to life. Darkness and light, stillness and motion. This darkness is my darkness, this light is my light. And so, the story of life unfolds.
朔月
あらゆるものが光を失い、漆黒だけが存在する。朔は漆黒。漆黒はやがて光を生み出し命を輝かせる瞬間を迎える。闇と光。静寂と躍動。その闇は私の闇。その光は私の光。そうして命の物語は紡がれる。
音楽:田川文彦
箏:横山佳世子
神楽鈴:横浜富久丸
写真:清水哲男
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清水哲男のサンクチュアリ
酒場 井倉木材@上京区, 京都市
頭に酒場と付かなければ、完全に材木店だ。店内のカウンターに入れなかった客は、木材店作業場の駐車場に用意された、ビールケースをひっくり返して積み上げた背の高い飯台を囲む。ここがメインの立ち飲みスペースとなる。人情として店内に入りたいのは当たり前。だから午後5時の開店前には行列ができる。
ところで井倉木材という店名だが、昼は木材屋、夜は酒場という不思議な業態によるものだ。実は、店主は元々井倉木材店の跡取りだったが、家業を継ぐ意志はなく飲食業で身を立てたいと考えていたが、先代社長の急逝でやむを得ず木材店の社長業を引き継ぐことになったそうだ。しかしやはり夢を諦めることはできずに、材木店経営の側居酒屋修行に励みとうとう木材店事務所を店舗に改装し立ち飲みスタイルでの営業をはじめたという。数ある京都の立ち飲み屋の中でも「超」のつく人気店になった。その要因のひとつに木材店で飲む?という店名があることは間違いない。
さて肴だが、これが半端ではない。何をつまんでも美味いと聞かされていた。さらに同行者からは必ずこれを食べないとダメだという指令がいくつかあった。まずは「本日のドススメ!(オススメではない)」ポテサラ90円からはじめる。立て続けに有名油揚げ専門店とようけ屋のおあげ焼いたん450円、肉と揚げ物の名店竹田屋のハムカツ450円、鰹の塩タタキ1300円。とりあえずビール(ハートランド550円)からスタートしたが、このあたりまでで日本酒を3合ばかりだったかどうか……。さらにのりチーズ450円、かにみそのルイベ900円、イカ丸干し400円、たたみいわし500円、せせり塩焼500円へと続いていったのだ。立ち飲みだと侮ってはいけない。ここの料理はかなりのレベルだ。だから腰を据えて長っ尻(立ち飲みだからおかしな言い方だが)で飲み続ける客も多い。夏には鱧、冬には蟹など旬の味覚もメニューに名を連ねる。そしてそのクオリティはそこいらの割烹に引けを取らないのだ。
うまい日本酒は揃っている。チューハイ各種、焼酎は芋・麦、黒糖焼酎……。そうそう、金宮を乳飲料マミーで割ったマミー酎なるものも。ヤクルトで割ったらヤク酎になるから危ないな。
5時に入って8時過ぎまで飲み続けた。いやはや美味かったとしか言いようがない。勘定を済ませて通りに出ると、そこにはまだ長い行列ができていた。
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揺れて歩く人々の問い vol.86
10年前、あなたは何を考え何をしていましたか?
写真は鹿児島の飲み手なら必ず知っている騎射場の鳥料理の店アサヒ。10年前僕はよくここで飲んでいました。でもこの写真を撮った直後に店じまいしていしまいました。僕はここで酔っ払いながら、これから先の10年どんなふうに生きようかと思っていました。僕は今、自分が思い描いていた10年後を生きているのかな……。そこであなたにおたずねです。10年前、あなたは何を考え何をしていましたか?
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しみてつコラム
みんなどこに行ったのだろう
40年ぶりに神戸三宮から元町をつなぐ高架下商店街を歩いた。大学生の頃は頻繁に通っていた。神戸大学に通う高校の同級生が六甲道に下宿していたのだ。よく彼を訪ね、一緒に三宮、元町、新開地あたりで遊んだものだ。遊ぶと言っても昼間は喫茶店でコーヒーを飲みながら音楽や本や映画や恋、将来を語り、陽が傾くとコーヒーは酒に変わった。それから彼の下宿に戻り飲み続け、朝まで議論することも稀ではなかった。そういえば隣人から早く寝ろと叱られたこともあった。
当時の僕は着るもののほぼすべてを高架下の古着屋で買っていたような記憶がある。ジーンズにしてもTシャツ、トレーナーにしても、靴にしても、何もかもが京都・大阪で売られていたものよりアメリカっぽかったような気がして……。それから中古レコードかな。それに今みたいになんでもネットで買えた時代ではなく、店まで行って買うわけだから、どうせなら神戸でということだったんだろうな。そんな神戸も同級生が卒業すると同時に足が向かなくなった。それから40年だ。その間に阪神淡路の震災があった。来年でもう30年だ。ちゃんと復興しているはずだ。今はどんな賑わいを見せているのだろう。ワクワクしながら出かけた。
三宮の駅に着いたのが10時半頃だった。まだ早過ぎるかもしれないなと思いながら高架下に入った。案の定ほとんどの店がシャッターを下ろしていた。午後からまた出直すかなと思った時だった。シャッターに貼られた1枚の紙に目が止まった。「42年間のご愛顧ありがとうございました」。店じまいしたんだ。そういえばあちこちに「貸店舗」の貼り紙があったな。ここもご多分に漏れずシャッター街になっているのか……。しかし42年といえば、震災も乗り越えたことになる。なのにコロナ禍以降の社会の動きに着いていけなかったのか、あるいはネットに押されて実店舗の経営は難しくなったのか……。聴いたところでは、元町から西、モトコーと呼ばれていた商店街はJRと借地契約で揉めて立退を余儀なくされた店も少なくないそうだ。
人通りのないトンネルのような高架下で思った。僕が知る頃の高架下には、あの時あの時代の空気が充満していたように思う。もともと闇市からはじまったというこの商店街には、苦境を乗り越えて生きていこうとする人々のバイタリティのような気迫も感じられた。だけど、僕にとって「今」ここに残っているのはほぼ完全な抜け殻としてシャッターを下ろした建物だった。みんなどこに行ったのだろう。何があったのだろう。どこでどうしているのだろう。多分その「みんな」の中に僕も入っていることは間違いないだろう。
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