INDEX

  1. 横目流し目 人生最大のピンチ
  2. Prof. 田川の揺れる音楽道 #80
  3. 清水哲男のサンクチュアリ すぎだまさけのみせ
  4. 揺れて歩く人々の問い vol.93
  5. しみてつコラム『それくらいがちょうどいい』
  6. 写真展のご案内
  7. ご購入のご案内

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横目流し目 人生最大のピンチ

人生最大のピンチなどと言うと、またお金のことかなどと笑われてしまいそうですが、お金のピンチなら今に始まったことではありません。ずっとピンチ続きですからあらためて言うことでもないかな、と。では何がピンチかと言うと、4月に予定していた(ぼくらだけが予定していただけでしたが)新刊拙著『時間の隨』が大きく遅れるということなんです。遅れるとどうなるか……。4月半ばからGW明けに予定している京都・大阪の写真展に間に合わない。つまり最大の販売チャンスを逃してしまうことになるのです。それだけではありません。新刊の発売に合わせて写真展のタイトルを『時間の隨』として、展示する写真をその本に収めたものの中から選ぶというつもりでいたのです。
すべてがまったく成り立たなくなってしまいました。こんなことははじめてです。ああしよう、こうしようと決めたことは、多くの皆さんの力を借りてなんとか実現に漕ぎ着けてきました。今回もそうですいろんな問題を抱えながら周りの人に助けてもらって、なんとか乗り切れそうだなと思った矢先でした。版元から「間に合わない」と連絡があったのは。
原稿を渡したのが2月冒頭。あちこちに掲載した原稿をまとめたものだから、編集にもそんなに手間はかからないかな、造本だけだなと、今まで多くを出版してきた経験から一人合点していました。ぼくが甘かったと言わざるを得ません。「校了にたどり着くのに4月いっぱいです」と。そのくらい時間かかるの当然でしょ、という感じです。困りました。計画していたすべてのことがダメになります。人生最大のピンチです。
でもね、こういうときに培ってきたネットワークが助けてくれるのです。ありがたいです。あちこちに相談すると次々にアイデアを返してもらえました。考えてみればぼくはいくつものピンチを大勢の人の力で乗り切ってきて今があるのです。そのことにあらためて気づかせてもらいました。ぼくが今こんな文章を書いている時でさえ、大阪ではフレームづくりに汗をかいてくれている人がいるし、鹿児島ではなんとか出版を間に合わせようと段取りしてくれている人がいます。経済的な心配、サポートをしてくれる人もいる。搬入・搬出は手伝うよと言ってくれる人がいる。何よりも写真展は必ず見に行くよ、新刊書は必ず買うよ、読むよと言ってくれる人がいます。感謝しかないですね。
ぼくは本当に大勢の人に支えられています。ピンチに出会うたびにそう感じます。だから、人生最大のピンチだからといってうつむいてため息をついている場合じゃない。しっかり前を向いて一歩ずつ進んでいかないとと思っています。あらためましてみなさんどうぞよろしくお願いいたします。

新刊『時間の隨』の表紙カバーになる予定の写真。「屋久島の夕景」

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Prof.田川の揺れる音楽道 #80

Invisible city

Invisible city
What am I seeing?
What are you seeing?
Are you seeing everything?
Are you seeing nothing?
Does that which exists have form?
Or is it just something we believe?

見えないまち
ぼくは何を見ている?
あなたは何を見ている?
すべてが見えている?
何も見えていない?
存在するものに姿はあるのか?
あると思い込んでいるだけなのか?

音楽:田川文彦
写真:清水哲男
制作著作:office432
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清水哲男のサンクチュアリ
すぎだまさけのみせ@高倉通押小路下ル, 京都市中京区

帰りは笑顔の見送りつき

来年の写真展の打ち合わせに京都市内のギャラリーに出かけた時のことだ。打ち合わせを済ませて夕景の京都の街をぶらぶらしていた。次の約束までまだしばらく時間があった。この時間コーヒーでもあるまいし、ちょこっと飲める立ち飲みでもあれば……。と、軒下に「かくうち」の張り紙と「営業中」の旗がはためいていた。杉玉もぶら下がっている。酒だっ!
ドアを開けて入ったすぐは酒屋のようだ。棚には酒が並んでいる。カウンターはずっと奥にある。なるほど酒屋で酒を飲む「かくうち」だ。人の良さそうなおねえさんがはじめてかと訊く。そうだと答えるとこの店杉玉のシステムを紹介してくれた。

客はまず2000円でカルタを8枚買う。1枚あたり250円だ。そのカルタと引き換えに酒やつまみを注文するのだ。酒は、京都だから日本酒がメインだ。冷蔵庫の中、周囲の棚にびっしり並んでいる。それぞれキャップに2枚、3枚とシールが貼られている。ほとんどが2枚、ちょっといいのが3枚、高いのが4枚。つまみは1枚からある。カルタが足りなくなれば4枚1000円から買い増しできる。余れば1枚250円で引き取ってくれる。理にかなったやり方だと思った。少なくとも2000円は使ってよね、と。

とりあえず4枚の酒を頼んだ。客は冷蔵庫から一升瓶を取り出しおねえさんに渡す。おねえさんはきちっと計量(90ml)してグラスに注いで客に出す。客は一升瓶を冷蔵庫に戻す。うまく客を使っているように思えるが、実はこれが店と客の一体感を醸し出すのだ。燗も自分で付ける。客は嬉々として働く。

つまみに選んだのは粕汁(カルタ1枚)だ。鹿児島では滅多に味わえない。鹿児島には酒粕なんて滅多に売ってないから。京都に戻るとあちこちで粕汁を頼むことになる。杉玉の粕汁は少々大きいめの器で出てくる。味はトロッとして濃厚。これだけで十分つまみになる。具はニンジン、ダイコン、そして鶏の手羽先。粕汁と言えば普通シャケのアラだが、これはこれでイケる。おかわりをしてしまった。酒を何杯か飲み、最後の1枚でタコさんウインナーを。2000円ちょうどでずいぶん楽しめた。帰りは笑顔のお見送りつきだった。

いいな。ちょこちょこ来ようと思っていたのだが、残念ながら3月いっぱいで店を閉じるそうだ。いい店だったのに……。
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揺れて歩く人々の問い vol.93

最近よく耳にする『壁』ですが、あなたには気になる『壁』がありますか?


所得税の壁、社会保険の壁、最近よく耳にする『壁』という言葉ですが、あなたには気になる『壁』ってありますか?
ひょいと簡単に超えてきた『壁』、越すに越されない『壁』、なあんだそんなことだったのかというアホみたいな『壁』、どんな「壁』でもかまいません。お気軽にコメントしてください。
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Fumihiko Tagawaさん
“いい酒を少量嗜む”の先に“どんな酒でも大量に飲む”という行為がありその間に壁があるのですが、この壁が大変弱い壁で秒で崩壊します。
所得税の壁もこのくらい弱ければいいのにな….、と思います。
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神田 稔さん
或る中国系アメリカ人のスタンダップ・コメディアンが、流暢な英語でこんなジョークをかましていました。「皆さん、私は中国から来ました。だから『壁』が役に立たないことを知っています。」(客席笑)
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Masako Fujiiさん
幼い頃に東京に遊びに行った時スパゲッティ専門店『壁の穴』で、はじめて食べたたらこスパゲッティが衝撃的でした。スパゲッティと言えばナポリタンやミートスパゲティくらいしか知らなかったし、和風スパゲッティなんて初体験。
今でこそ、山菜の和風パスタとかたらこスパゲッティとか当たり前みたいになったけど、その衝撃たるや本当に脳か心臓かお腹かわからないけど、ガツン!!と来たの覚えているくらいです。
たらこスパゲッティ発祥の店で京都に出来た時は嬉しくて行きまくりました。
先月急逝した叔母との思い出のお店です。
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今回コメントを寄せていただいた方、ありがとうございます。詳しくはこちらをどうぞ。
https://www.facebook.com/groups/1651099238372682/posts/3159822444167013
次回94回目の問いかけは、「あなたが経験した人生最大のピンチを教えてください」です。〈揺れて歩く人々の対話テーブル〉でのご回答よろしくお願いします。
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しみてつコラム
それくらいがちょうどいい

マイクさんの話を聞くながやん(右) 後ろ姿にも真剣さと必死さが滲む

日本ALS協会副会長里中利恵(さとなかりえ)さんからメッセージが届いた。
彼女はALSで父親を喪っているがその介護と並行して、ALS患者が孤立することなく、豊かに暮らせる社会の実現を目指して協会の活動に参加してきた。その活動の場は全国にひろがり忙しい毎日を送っている。

こんにちは。日置市長とお目にかかってきて、清水さんの話が出ました。
清水さんのお陰でスムーズにご理解いただけました。ありがとうございます。

そういえば、ぼくはALS患者の取材にあちこち出かけ、京都在住の患者マイクさんが療養する病院に日置市市長になる前のながやんこと永山由高さんを引っ張り出したことがあった。彼は、言葉をうまく発することができなくなったマイクさんが、文字盤や身振り手振りで思いを伝えようとする姿を必死になって追いかけていた。「半分も分かりませんでした」と悔しさにまみれた表情が忘れられない。その悔しさがALSや難病の事実を理解しようとする彼の姿勢、果ては政治に繋がっていくとしたらぼくはうれしいけど、それはぼくのお陰なんかじゃなくて、彼がそういう弱い立場にあり困難に直面している人たちにちゃんと寄り添える力を持っているということだと思う。

日置市は今後、医療的ケア児のことも頑張っていきたいとのことでした。
すぐすぐ変わることではないと思いますが、それでも市長の気持ちを聞けただけでもうれしかったです。

メッセージはそう締めくくられていた。いいな、と思った。短いメッセージだったけど、ながやんと利恵さんの真剣なやり取りが浮かんできたし、ながやんが頑張っていることもわかった。もし、ぼくと一緒にやってきたことにながやんがわずかでも意味を見出してくれているとしたら、ぼくはとてもうれしいな。
でもぼくは、彼が市長になってからあまり近づかないようにしている。彼はこれから活躍の場をこの国全体にひろげていくに違いない。こんな変な親父がうろちょろすると、ね。だから遠くから期待を込めて見守ることにする。ぼくにはそれくらいがちょうどいい。
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清水哲男写真展「時間の隨」

漂い流れ消えていく日々

些細な心の安らぎ、痛みからこの国と社会が抱えた歪み、矛盾、問題まで。
日常の何気ない風景に隠された物語を写真と文章と音楽で読み解く。
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@Space Mu (大阪市, JR桃谷駅徒歩5分)
2025年4月16日(水)〜20日(日) 12:00〜18:00
OPENING EVENT『タカダワタリズム2025』 16日(水)18:00〜
FAWELL EVENT 『金森幸介ライブ』20日(日)18:00〜


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@JARFO京・文博(京都市中京区:京都文化博物館)
2025年4月29日(火・祝日)〜5月11日(日)12:00〜18:00
OPENING EVENT 『ナオユキ独り舞台』29日(火)
16:30 OPE 18:30 START

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