横目流し目 流れていく時間の中で

能登地震から1カ月以上が経ちました。テレビやネットに流れる映像を見ていて思うことは、1カ月経っても何も改善しないんだなあということです。確かに道路は応急手当てが進み通行可能になり、電気、水道も復旧しはじめているし、ボランティアも入りはじめ様々な生活支援にも力が注がれるようになりました。いろいろ不十分なこともあるでしょうが、止まっていた時間が動き出したと思っている人も多いことでしょう。
輪島市で被災した友人と電話で話しました。1カ月経って少しは落ち着いたかと聴くと、
「おかげさまでなんとかね」
と弱々しい声が返ってきました。彼は高齢で1人暮らしのお母さんとお正月を過ごすために元旦の朝に輪島の実家に戻りました。そしてあの地震に見舞われたのです。彼の実家は昨年5月5日の地震で大きな被害を受け立て直したばかりでした。新築で耐震強度もあったため、今回の地震に建屋自体は耐えられたそうです。しかし室内はめちゃくちゃ。彼もお母さんを背負って外へ逃げ出すのが精一杯だったと。
ところが外へ出た瞬間に周囲の家々が次々に倒壊したといいます。隣は同級生の家だったそうですが、全壊し帰省していたお孫さんたちが亡くなったそうです。彼は消え入りそうな声で言いました。
「いろんなことがフラッシュバックしてきつい……」当たり前にあったものが、突然消えてなくなる。そんなことに耐えられる人がいるでしょうか。実際に感じた揺れや、耳にした轟音、悲鳴を忘れられる人がいるでしょうか。「まちは復旧、復興したとしても、心がもとどおりになることはないよ」
彼はそう言って電話を切りました。
阪神淡路の震災から29年、東日本大地震から13年、熊本地震から8年、大阪府北部地震から6年……。僕らは流れていく時間と復旧・復興に目を向けがちだけど、どれだけ時間が経とうが、まわりの風景が変わろうが、癒せない心の傷を抱えながら生きている人が大勢いることを、決して忘れてはならないと思いました。
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INDEX

  1. 横目流し目 流れていく時間の中で
  2. 清水哲男のサンクチュアリ 皆様酒場 昭和ゴールデン
  3. Prof. 田川の揺れる音楽道「going home:The scenery of a nuclear power plant」
  4. 【速報】タカダワタリズム2024開催決定!
  5. 清水哲男写真展「笑う力 ver.2」のお知らせ
  6. しみてつコラム「僕は今日も生きている」
  7. ご購入のご案内

皆様酒場 昭和ゴールデン
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清水哲男のサンクチュアリ

皆様酒場 昭和ゴールデン@大阪駅前第4ビル,大阪市北区梅田

大阪梅田。関西を代表する巨大ターミナルだ。ここは地下の街でもある。阪急梅田駅を出て地下に潜る。自分がどこにいるのかまったくわからない。目印になるようなものもない。どこを見ても同じような風景しかないのだ。通勤通学で毎日通っているならまだしも、滅多に来ないよそ者には東西南北もわからないのだ。「最近ならスマホのナビという便利なものがあるじゃないか」というあなた。一度スマホを頼りに大阪梅田の地下街を歩いてみるといい。人の流れの中で何度となく立ち止まり、何度舌打ちをされたことか……。都会は馴染めないな。そう思った。
ようやくたどり着いたのは、大阪駅前第4ビル。ビルの位置も形も何もわからない。地下道からビルに入ったことすら気づかない。いきなり飲み屋街がひろがる。こうなるとさっきまでのブルーな気分は消えて無くなる。
立ち飲みがやたら多い中、しっかり座って飲めるこの店に入った。いやはや人でごった返している。相席相席でどんどん人を詰め込んでいく。人気のある店なのだ。さて何を飲むかと隣のテーブルを見ると、ウイスキーの4リットルボトルが目に入った。キープだそうだ。まわりのテーブルを見ると、やたら4リットルボトルが。常連の定番のようだ。しかもそれをお湯わりで。
僕は関西方面に来ると必ずこれだ。バイスサワー。バイスは梅酢、だ。これが爽やかでなかなかいける。アテは関東煮(かんとだき)の大根に厚揚げ、玉子。これはおでんのこと。それにハムカツくらいかな。あとは酔客たちの喧騒に身を任せる。なんとも不思議だが、この騒がしさが疲れを癒してくれるのだ。

皆様酒場 昭和ゴールデン 大阪駅前第4ビル B1F,大阪市北区梅田1丁目11−4

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Prof. 田川文彦の揺れる音楽道

going home:The scenery of a nuclear power plant

 

going home
TBirds can return to their own land even if they are thousands of kilometers away. However, since that day 12 years ago, there are people who, no matter how much they long to return, cannot go back to their hometown. They have lost their homeland.
帰郷
鳥たちは何千キロと離れていても自らの土地に帰る。しかし、12年前のあの日から、どんなに帰りたくても故郷に帰れない人たちもいる。故郷を失ったのだ。
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【速報】タカダワタリズム2024開催決定!


4月16日は高田渡さんのメモリアルデイだ。
その日にあわせて2013年に第1回を、それから2014年、2020年と渡さんのお骨のある鹿児島で、タカダワタリズムというタイトルで渡さん縁のミュージシャンを招きライブを続けてきた。
1回目に歌ってくれた中川五郎さんの言葉をかいつまんで紹介する。
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2005年4月16日、高田渡さんの魂は天に帰った。だから渡さんはいたるところにいて、ぼくらが彼のことを想えば、そして彼の歌を歌えば、いつでもそこに来てくれる。
渡さんの命日に彼を想い、彼の歌を歌う集まりを毎年やろうという話が持ち上がった。もちろんただ渡さんを偲ぶだけでなく、彼の歌を、彼の生き方を未来にも伝えていこうという集まりだ。
そのタイトルに選ばれたのが「タカダワタリズム」という言葉。ワタリズムは、Wata-rhythmにしてWatar-ism。自分のリズムを大切にしながら人生を生き、自分のリズムで歌を歌い続け、自分の考え=イズムを持ち続けた高田渡という人を表す言葉だ。
4月16日、きっと渡さんはぼくらのそばにやって来て、あの独特のリズムで一緒に歌い、踊ってくれることだろう。
ーー
4回目となる今回は大阪に場所を移して、清水哲男写真展「笑う力」展示の中で、中川五郎さんと大塚まさじさんを迎えてみんなで渡さんを想いながら歌い踊りたい。

日時:2024年4月16日(火)
OPEN 17:00
START 17:30
出演
カオリンズ(OA)
中川五郎
大塚まさじ
charge:3500円(1ドリンク付)
会場:cafe gallery Space Mu
所在地: 〒543-0042 大阪府大阪市天王寺区烏ケ辻2丁目2−16
( jr桃谷駅から259m )
電話番号: 06-6771-1168
https://www.facebook.com/events/756612949328672/
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清水哲男写真展「笑う力 ver.2」

開催のご案内

清水哲男写真展「笑う力 ver.2」
どんな逆境にあっても、どんなに悲しくて辛くても、人は笑う。
笑う力は生きるエネルギーとなり、人は人生という透明な軌道を走っていく。

昨年京都文化博物館別館 JARFO京・文博で開催した写真展「笑う力」に新しい作品も含めてご覧いただきます。

2024年4月12日(金)〜17日(水)
12:00〜18:00(最終日は16時まで)
清水は毎日在廊いたします。
Space Mu
〒543-0042
大阪府大阪市天王寺区烏ケ辻2丁目2−16
06-6771-1168
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しみてつコラム

僕は今日も生きている


6年前の今頃、抗がん剤治療がはじまって2クール目くらいだったな。副作用がではじめて、身体がついていけずにずいぶん苦労していた頃だ。冷たいものがさわれなかったり、飲めなかったり。冷たいものは空気まですべてがダメだった。常温の水さえ口にすることができない日もあった。家の中でも手袋が欠かせず、決して冬の外気に身体を晒さないようにし、部屋の真ん中で丸まってじっとしていた。
抗がん剤治療が終わり2年が経ち、ようやく副作用が治ったかと思えるようになった頃だった。その冬はやや暖かくて、寒さに緊張することもあまりなかった。術後2年半の検査もなんとか乗りきれたし、平穏な日々が戻ってきたような安堵感があった。
でも、少し油断をすると、副作用の後遺症のようなものが顔をのぞかせた。ある朝、右足の親指の爪が逆剥けを起こすように剥がれた。飛び上がるほど痛かった。いつまでこんなことを繰り返すのかとうんざりして、こんなことなら痛みを感じない身体になりたいなどと少々の愚痴をfacebookに書き込んだ。するとある女性から
「痛みは生きている証拠ですよ。痛みを感じなくなりたいだなんて、死にたいと言っているのと同じ」
とメッセージをもらった。
「だよね。1回きりの人生だもんね。頑張って生きないと」
と返信すると、彼女から1枚の画像が届いた。スヌーピーとチャーリー・ブラウンの会話だ。
そうか……。僕らは毎日生きている。生きているからこそ痛みも辛さも実感できるんだ。そんなことを教えてもらったような気がした。痛みこそが生きている証拠だと思うと、その痛みも少々の喜びに変わる。人からするとおかしいんじゃないかと思うかもしれないが、僕は真面目にそう思った。
彼女も実はがん患者だった。僕らはその後おたがいの病状や検査の結果、思いや悩みなどを語り合った。彼女は悩むことすら生きている実感につながると言った。だから毎日怯えて、毎日悩んで、毎日泣いて、毎日笑って生きているんだと。そうしてその1年後、1回きりの死を迎えた。僕より遥かに若い人だった。どんなに悔しかっただろう。どんなに悲しかっただろうと思った。
「生きてるこの時間を幸せ感じて生きましょう!」
これが彼女が最後にくれたメッセージだった。その「幸せ」の意味をずっと考えながら、僕は今日も生きている。

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頁数:192p
体裁:B5変形横型(182mm×210mm)
ISBN:978-4909819086
2020年4月15日 初版発行
価格:2420円(本体2200円+税)
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