ご挨拶


今年の秋は遅いと前号で書きましたが、どうやら今年は秋を飛ばして一気に冬になりそうですね。しかも寒さと暑さを繰り返しながらという非常にややこしい気候になっています。これも温暖化の影響なのでしょうか。当惑しているのは人間だけではありません。今年はクマが里山を飛び越えて市街地にまで姿を頻繁に現しています。しかも住宅の庭先の柿の実や酪農場の牛の飼料、畑の農作物、稲など、餌となる食べ物を求めてやってきているのです。その結果人と遭遇して襲いという事故も多発し、命を落とした人もいます。明かに彼らの住処である奥山に食べ物となる木の実などがないのでしょうね。クマも困った末の行動だと、僕などは思います。写真は敦賀半島のある海辺の集落です。「クマ出没注意」という文字を見て怯えている僕らに、集落のお兄さんは「クマの縄張りに入る時には注意してということだよ。ここまでは出てこないから」と話してくれました。なるほど。人間はずっとクマの縄張りを犯してきたんだね。クマにしてみれば迷惑な話ですよね。食べるのに困って里・市街地に降りてきたら「害獣」って呼ばれて、最悪殺されちゃう。確かにね、人を襲ったクマを放置することはできないけど、駆除したって同じことの繰り返しになるような気がします。何だかもっと上手い解決策はないのでしょうかね。人間にもクマにも良い解決方法を考えること。それは、クマの縄張りを犯し、彼らの生きる糧である自然を破壊し続けてきた人間の責任でもあると思う清水哲男です。
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清水哲男のサンクチュアリ

少年京都@天文館,鹿児島市東千石町

「少年京都」などという店名を聞いて、黙って通り過ぎることなんかできないじゃないか。鹿児島で、だよ。京都出身だというと、「なんだお公家さんか!?」などと人を小馬鹿にしたような声が返ってくる土地柄だ。「この国をつくったのは薩摩だ」というアナクロなオヤジが蔓延っているからな。仕方のないことだ。150年以上進歩がないんだ。そこで「少年京都」とは、「なかなかやるじゃん!」というのが第一印象だった。
「別に深い意味はないんです。僕、京都出身でもないし」オーナーのH氏はふっと笑った。肩の力が抜けて、とても自然な感じだった。
「少年京都」は立ち飲みだ。しかし焼酎はない。あるのかもしれないが、焼酎を飲んでいる客になど出会ったことがない。日本酒とワインが中心で、生ビール、ハイボールくらいかな。つまりは鹿児島のうるさいジジラ丸出しのオヤジは来るなということだ。肴だって、鹿児島では口にできないようなものばかりだ。ちなみに僕はいつも氷頭酢、鯨のタレ、潤香(うるか)で田酒を飲る。ここはいつ覗いても田酒が飲める鹿児島では数少ない店だ。僕が無類の田酒好きだと知って、H氏は大腸がんの手術2日後の病室に一升瓶をぶら下げて現れた。あれはうれしかった。
シーズンになると数の子などというのもいいな。そうしてH氏とさまざま話し時間を楽しむのだ。話題はさまざまだ。映画や音楽、時にはポルノやストリップにも話はひろがる。
言っとくがセンベロなどというものはない。杯を重ねた分、過ごした時間の分、ちゃんと払って帰らないとね。鹿児島のアナクロオヤジは行かない方がいいよ。大声で自分のことばっかり喋る奴は嫌われるから。

INDEX

  1. 清水哲男のサンクチュアリ 少年京都
  2. Prof. 田川の揺れる音楽道「The myth of security:The scenery of a nuclear power plant」
  3. 揺れて歩く人々の問い vol.69
  4. しみてつコラム「ありのまま」
  5. ご購入のご案内

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Prof. 田川文彦の揺れる音楽道

The myth of security:The scenery of a nuclear power plant

https://soundcloud.com/yurete_aruku/the-myth-of-securitythe-scenery-of-a-nuclear-power-plant
The myth of security:The scenery of a nuclear power plant
The myth of security, monotonously repeated…….
安全神話
単調に繰り返される安全という神話…….

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揺れて歩く人々の問い vol.69

「あなたはネットバンキングを使っていますか?」
「あなたはネットバンキングを信頼できますか?」

ネットバンキングにまつわることならなんでもかまいません。お気軽に!
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R.Mさん
使っている。振込手数料の安さと履歴が直ぐに管理できる。
銀行での振込の用語はカタカナふりがなが基本です。濁点違いでトラブルありますし、株)が頭につくか、後につくかでまたトラブルです。訂正が許されない銀行業務です。その点ネットでは訂正が安易です。
ーー
S.Rさん
私は使ってます。
夫は使い方も知らないと思います。
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T.Kさん
別にいらんやんと思ってたけど、近所に銀行ないしアプリ入れたらこんな便利なもんありません。なんと言っても資金不足になれば、隣に置いてあるカミさんのスマホからチャチャっと自分の口座へ資金移動できるのが何よりありがたい😜。
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C.Hさん
多分、一生使いません。信頼も出来ません。ATMから出てくるお金さえいちいち数えて確認しているほどです。ネット上の数字なんて簡単に書き換え操作も出来るだろうし、ミスもあるだろうし。人間よりマシンが必ず正しいと思い込まされていくのが怖いです。
ーー
M.Fさん
使っていません。未だに意味がわからないし、何より動かそうにも出ていくばかりで必要性があまりない。振込料無料とか聞きますが、振り込む事も年に1〜2回。それも娘のネットバンキングでやってもらいます。ぐるぐる回す間に勝手に増えるなら今すぐやります。
ーー
詳しくは
https://www.facebook.com/groups/1651099238372682/posts/2765733400242588/
からもどうぞ。
次回〈揺れて歩く人々の問い vol.70〉は、
「あなたがあきらめたもの、あきらめきれないものを聞かせてください」です。FBグループ「揺れて歩く人々の対話テーブル」にアップしますので、そちらにコメント書き込みをお願いします。

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しみてつコラム

ありのまま

ミツコさん(仮名)と7年ぶりに会うことができた。
はじめて会ってからだと、もう27年がすぎた。「もう還暦だ」と笑ったが、その笑顔は27年何も変わることがない。
彼女は大きな口を開けてガハハと笑う。絶えず首を左右に振っているので、怪獣が吠えているようだと自分で自分のことを「怪獣ミツラー」と呼ぶ。生まれてくる時、酸素不足で脳がダメージを受け脳性麻痺という重い障害を持った。
1992年にある社会福祉法人が出した「写真ことば集ありのまま」という本がある。その大トビラに彼女が車椅子でまちを行く後ろ姿があった。それを鹿児島に移った直後、27年前に見て、会いたいなと思い出かけたのだ。
彼女が自分の意思で動かせたのは足だけだった。車椅子に乗り両方の足で地面を蹴って進むのだ。言葉には重い構音障害がり、会話をするにも時間がかかった。だけど食いしん坊でおしゃべりで底抜けに明るかった。
「私たちはありのままに生きていくしかないの。辛いこともたくさんあるけれど、楽しいこともたくさんある。決して不幸でもかわいそうでもないよ。まして自分じゃ何もできないダメなんかじゃない」
そんな言葉が強く印象に残っている。
そんな彼女にたずねた。
「夢は?」
「恋愛して結婚すること」彼女は大きく笑って、逆に聞き返してきた。「無理だと思うでしょ?」
「いいや。大丈夫だよ。あきらめないで」
今でも僕は本当にそう思っている。
その後彼女には何度も試練がおとずれた。白血病、乳がんという大きな病気に加えて、動かせていた足も次第に衰えた。車椅子も自力で動かせなくなり、外に出ることも人と会う機会も少なくなった。足でレバーを操作する電動車椅子に換えたが、それもうまくいかなくなった。病気の方は何とか落ち着いたが、ずいぶん元気がないと人づてに聞いた。すぐにでも会いにいきたかったが、僕も大きな病を得、さらに新型感染症の蔓延でそれもままならなかった。
確かに足は動かなくなり、車椅子からずり落ちないように身体をベルトで固定して、ひとまわり小さくなったような感じだった。
「もう、おばあちゃんだからね」
そういうと彼女はガハハと笑った。何も変わってないな。歳をとったというなら僕も一緒だ。いや、みんな一緒だ。27年たてば27歳をとる。
話の最後にはじめて会った時と同じ質問をした。
「夢は?」
「ない……」
「あきらめちゃった?」
「……」
「じゃあ、あきらめたものとあきらめきれないものは? まず、あきらめたものは?」
「結婚。もう歳が歳だから」
「あきらめきれないものは?」
「恋愛。これからはずっと恋する女でいる」彼女はふたたびガハハと笑い、こう続けた。「報われない愛に生きていくの。無理だと思うでしょ?」と。
ふと思った。彼女はこれまでにどれほどのものを、ことをあきらめてきたのだろうかと。だけど彼女は、そんな自分のことを
「不幸でもかわいそうでもない。ましてダメなんかじゃない」
と言った。
そうだな「無理だ」と思っているのは、健常者を中心にまわっている社会の方だし、そんな社会ってつまらないよな。できるなら、怪獣ミツラーと一緒にこの頑迷な社会を破壊し尽くしたいと思った。いや、少なくとも彼女は、ありのままに生きることで社会を変えようとしているのかもしれないな、と。

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「揺れて歩く ある夫婦の一六六日」概要
頁数:192p
体裁:B5変形横型(182mm×210mm)
ISBN:978-4909819086
2020年4月15日 初版発行
価格:2420円(本体2200円+税)
最後までおつきあいありがとうございました。
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