ご挨拶
毎年ゴールデンウイーク明けって、ちょっとしんどいんですよね。「そうだそうだ、休み癖がついて」って人は多いでしょうが、僕の場合はちょっと違います。ここ数年、GWは決まって大きな写真展をやっているので、全部出し切っちゃうというか、やりきっちゃうというか、へとへとになってなかなか次のことへ進めずにいるのです。前号のご挨拶の中で「次の作品・仕事のためならどこにでも行くと決めています」なんて言いましたが、それがなかなかね。ようやく次の取材の計画を立てたところです。次は北九州から山口、山陰松江、米子、丹波を抜けて舞鶴、若狭、敦賀と駆け抜ける予定です。どんな風景、人たちに出会えるか、今からワクワクします。でも、もう70歳を目前にして、いつまでこんなこと続けるのかなと、ちょっと不安な清水哲男です。
サンクチュアリ レストラン辻川東店@大石橋 , 京都市南区
京都ももったいつけた店が増えたなあと感じるのは僕だけだろうか。そういう類の店は、なんだかよそよそしくてね落ち着かないんだよ。そこいくとこの辻川東店などは、その対極にあるカジュアルでフランクで、とても居心地がいい。もともと肉屋さんがはじめたまちの洋食屋さんだ。
僕など物心がついた頃から出入りしているので60年以上の付き合いになる。鹿児島に移ってからはトンカツばかりでビフカツが気軽に食べられなくなった。にしん蕎麦もそうだけど、土地柄なんだろうなあ。鹿児島は豚の王国。カツといえばトンカツ、ホルモンといえば豚。だから僕は京都に帰ってくるとここでビフカツを食べるのが楽しみのひとつだ。
父が亡くなる直前に好物だったステーキが食べたいと言った。どうしようもなくて、思い余ってこの店に相談してみると快く引き受けてくれた。だから父が最後に口にしたのはこの店のステーキなのだ。息子さんがあとを継ぎ、店を改装したと聞いて出かけた。確かに店は綺麗になっていたが、味は何も変わっていなかった。
何がいちばんうまいかときかれたら躊躇なく答える。デミグラスソースだと。長年受け継がれてきた懐かしい、心優しい、洋食屋さんの味だ。(https://onl.sc/Wd3CVyE)
INDEX
- サンクチュアリ レストラン辻川東店
- Prof. 田川文彦の揺れる音楽道「trapped:power to laugh」
- Koneちゃんのプチボタニカル日記
- 揺れて歩く人々の問い vol.59
- しみてつコラム「やがて悲しき」
- ご購入のご案内
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Prof. 田川文彦の揺れる音楽道
trapped:power to laugh
I can’t laugh, but I’m happy.
ALS can take away physical freedom, but it cannot take away mental freedom. A healthy mind is trapped in a shell-like body. In this way, ALS robs people of their ability to express their thoughts, and also deprives them of their freedom of mind.
閉じ込められて:笑う力
笑えないんだ。でも幸せだよ。
ALSは肉体の自由を奪うが、精神の自由は奪えない。殻のような肉体に、健全な精神が閉じ込めらる。そうしてALSは思いを伝える術を奪い、精神の自由をも奪う。
https://soundcloud.com/yurete_aruku/trapped-power-to-laugh
清水哲男写真集「揺れて歩く」サウンドトラック https://soundcloud.com/yurete_aruku
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Koneちゃんのプチボタニカル日記
by Kone Kami
2023.5.26 イメージの拡張
殺風景なんだこの仕事場。下手をすれば朝起きて夜寝るまで、トイレ以外は外に出ないことだってある。なのに殺風景なんだ。資料や本がうず高く積まれ、どうでもいいようなものが散乱している。心がなごむひとときなどというのは望むべくもない。ふと思った。
〈この歳になって暮らしに潤いをなんて思っても遅いか〉
と。だけどもう少しなんとかならないものか……。
「何を言ってんだか、潤いなら酒があるじゃないか、酒でびちゃびちゃの人生だ」
口の悪い知人はそう言って笑った。
わかってないな。酒は潤いにならない。仕事で緊張した脳細胞を救う、あるいは真面目な性格を破壊するために飲んでいるのだ。文屋ってそういう生きものなんだ。
この仕事場に欠けているもの……。色でいうと灰色、黒、茶色、白が主流を占める。そうだ緑が、グリーンがないじゃないか。よしっ、観葉植物でも置くか。しかし放ったらかしにしてすぐに枯らすだろうな。でもな、やってみる前からダメだと決めつけるのもな。
ということで知り合いの花屋に相談してみた。
すると数日後留守の間に鉢が届けられていた。アイビー、オリヅルラン、パキラ、それに多肉植物の寄せ植えが5つ。おいおい1つ2つでよかったのに。こんなに……。手紙が添えられていた。
〈部屋に緑があるだけで全然違います。部屋の空気がほんの少し豊かになります。だって緑は生きものですから。そばに誰かがいるみたいな気分になれますよ〉
なるほどな。文屋=無頼=孤独って感じなのだろうな。
世話、手入れの方法も添えられていた。霧吹きや水差し、ピンセットまで。そして最後にひと言。
「どれもお不精さんにぴったりの育てやすく、手のかからないものばかりです。どうぞプチ・ボタニカルライフを楽しんでください」
文屋=無頼=孤独=不精にまでイメージは拡張されていた。
プチ・ボタニカルライフ……。僕のイメージの対極にあるようなもんだな。さらにイメージの拡張を目指そうか。
「おはよう、多肉ちゃん」
などとつぶやく日が来るのだろうか。そんな自分を想像して、ちょっと身震いした。
でもまあ、せっかくだからやってみるか、プチ・ボタニカルライフ。
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揺れて歩く人々の問い vol.59
テーマ:「あなたのスマホの待ち受け画面、ホーム画面を見せてください。」
みんな、カスタマイズっていうんですか、自分のお気に入りの写真をホーム画面や待ち受け画面にして楽しむんですね。なかなか秘密の写真だったりして人には見せられないという人もいるでしょう。そこをあえて、あなたの待ち受け画面、ホーム画面を見せてください。
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M.Yさん(鹿児島市)
この数年の待ち受けは孫の写真です。成長に合わせて更新してます。
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F.Tさん(鹿児島市)
ロック画面とホーム画面です。
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M.Fさん(京都市)
季節感もおしゃれ感も皆無ですが5年以上変えていません。新しいスマホに変える時にでも変えようかな…。
しかしまだ半年機種代金の支払残ってる💧
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T.Sさん
もう使う事ないだろうけど捨てられないレンズです。
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詳細は以下からどうぞ。
https://tinyurl.com/2elwgg5a
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しみてつコラム「やがて悲しき」
彼女は種子島西之表市の国上でひとり暮らしをしている。集落の奉納踊りでは花形をつとめるほどの踊りの名手で、ゲートボールの名手。集落にはなくてはならない存在だ。 だが彼女はさみしいのだ。大勢いた子どもたちは独立し家を出ていき、夫には先立たれた。 週に2回デイサービスに出かける。時々診察のために病院に行く。時々離れて住む娘が顔を見にくる。それ以外は買い物に出かけることもない。誰かが訪ねてくるわけではない。楽しみにしていた奉納踊りもコロナ禍と後継者難で取りやめになった。再開の見込みはない。 「ゲートボール仲間もみんな年寄りばっかりやもんで……」 彼女はさみしいのだ。ひとり暮らしの家の中で黙々と時間を過ごす。いつの間にか笑顔は消えた。テレビでお笑い番組を見ても笑うことはできない。それでもデイサービスに出かけるとちょっとは楽しい気分になる、家に戻るとまた黙々と時間を過ごす。 「年寄りはみんなこんなふうに暮らしちょるのかと思うと……」 彼女はさみしいのだ。
だから誰かが訪ねてくるとうれしくて仕方ないのだ。だけど、ながく笑顔を忘れていたので、顔が強張ってどうやって笑えばいいのかわからない。お湯を沸かし、お茶をいれ、家中のお菓子を集めて客をもてなす。その頃になるとようやく自然な笑顔になる。 いろんな話をする。しかし話はなかなか噛み合わない。彼女は自分の日常を話そうとするが、そんなに話題が多いわけではない。病院に行く、デイサービスに行く、そんなこと以外に特別変わったことはないのだ。 「お茶飲みなさい。お菓子食べなさい。ゆっくりしていきなさい……」 彼女の笑顔は次第に複雑になっていく。笑っているのか泣いているのかわからない。 「もう帰るんでしょう。またきてね」 その時彼女の笑顔は泣き顔になっていた。 また黙々とした暮らしが戻ってくる。彼女の笑いは人によって呼び起こされる。 子どもたちは思う、離れて暮らしていても親は元気で暮らしている。元気でいれば、近所に友だちもいるし、けっこう楽しく暮らしているはずだと。 彼女はさみしいのだ。(清水哲男写真展「笑う力」より)
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