INDEX
- 横目流し目 不幸中の幸い
- Prof. 田川の揺れる音楽道 #68
- 清水哲男のサンクチュアリ 富田屋@JR宮津駅前,京都府宮津市
- 揺れて歩く人々の問い Vol.83
- この1冊を読め!「幸福な無名時代」G・ガルシア=マルケス
- しみてつコラム「祖母さんのココロ」
- ご購入のご案内
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横目流し目 不幸中の幸い
台風10号(サンサン)すごかったですねえ。幸い僕の周辺では目立った被害はなかったな、よかったなと思っていました。だけどいろいろ連絡を取り合ってみて、身近な人がさまざまな被害に遭っていることがわかってきました。特に鹿児島県内では種子島、屋久島、枕崎の友人近辺、県外では宮崎県都城、宮崎の友人近辺に被害が多かったようです。不幸中の幸と言えるのは人的被害がなかったということだけです。だけど、実際に怪我をしたり命を奪われた人たちも。自分とその周辺が大丈夫だったからよかったねではすまされないなと思いました。
今回気象庁の「非常に強い台風10号が数十年に一度の勢力に。発達し経験したことのない暴風、高波、高潮になる恐れがある」との発表を受けて、不安を煽りすぎだという批判をSNSで見られました。闇雲に不安を煽っていると。同じような批判は南海トラフ地震臨時情報が発表された折にも見られました。そういう批判をする人は、おそらく自分の身の回りに何の被害もなかった人なんだろうなと思います。台風の被害にも地震の被害にも遭ったこともない人だろうなと。
気象庁の仕事としては最大限の警戒を喚起し一人でも多くの命を守ること。それが当然だと思います。それでもし不安でパニックに陥るような人がいたら、身近な人が手を握り身体と心を支え、この危機をどう乗り越えるかを一緒に考え行動すべきだはないでしょうか。気象庁は闇雲に不安を煽ってはいないと、僕は思います。
確かに台風10号は薩摩川内市付近上陸前の中心気圧は、27日午後3時には24時間で950ヘクトパスカル。70年ほど生きてきましたが、物心ついてから聞いたことなかった勢力です。で、ちょっと調べてみました。
ところで日本3大台風というのをご存知でしょうか?
僕が生まれた直後の1959年に伊勢湾台風というのがあって、上陸時の気圧が929ヘクトパスカル、最大風速75m。伊勢湾周辺は大規模な高潮に見舞われ多数の死者・行方不明者を出したのでこの名前がつけられました。全国で死者・行方不明で5000人を超えました。1961年には室戸岬西方に上陸した第2室戸台風がありました。上陸時の中心気圧925 hPa、75メートル、死者・行方不明200人でした。遡って1945年の枕崎台風。上陸時の中心気圧916.1hPa、最大風速51.3m、死者2,473人・行方不明者1,283人・負傷者2,452人と記録されています。この3つの台風を日本3大台風と言うそうです。他にも平成27年台風第21号は、2015年9月に発生し、沖縄県の与那国島に約半世紀ぶりとなる猛烈な暴風をもたらしました。ずっと海上を進んで、最後は中国大陸に。最大瞬間風速は81.1mを記録しています。
再度気象庁の「非常に強い台風10号が数十年に一度の勢力に。発達し経験したことのない暴風、高波、高潮になる恐れがある」との発表を見ると、「数十年に一度の勢力」というのは間違っていないですね。「経験したことのない」というのも、3大台風を経験した人がどれほどいるかということですね。ほとんどの人が経験していないし、経験していたとしても記憶にないんじゃないかな、僕みたいに。だから「数十年に一度の勢力」と「経験したことのない」は決して矛盾しないということです。それよりも「大変な台風が来ますよ。命を守る行動を!」というのが気象庁の姿勢ですよね。
身の回りで被害がなかった、少なかったのは不幸中の幸い。大変な被害に遭った人も多い。自分とその周辺が大丈夫だったからよかったねではすまされない。そう思いませんか?
まだまだ台風の季節は終わっていません。どこでどんな災害が起きるかわかりません。誰が被害に遭うかわからないのです。まだまだどうぞ最大限の注意・警戒を。
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Prof.田川の揺れる音楽道 #68
Emergency Alert
https://www.youtube.com/watch?v=MisDZ3IYEtQ
Emergency Alert
Evacuation order. This is the Kagoshima City Hall Disaster Prevention Office. Typhoon No. 10, Sansan, extremely strong, is approaching, and violent winds and heavy rain are expected. We have issued a Level 4 alert and evacuation order for the entire city.
緊急速報
避難指示。こちらは防災鹿児島市役所です。非常に強い台風10号サンサンが接近し、暴風・大雨が見込まれるため、市内全域に対し、警戒レベル4、避難指示を発令しました。
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清水哲男のサンクチュアリ
富田屋@JR宮津駅前,京都府宮津市
原発の取材でよく若狭、敦賀方面に走った。おおよそ琵琶湖湖西まわりだが、ときどき京都縦貫道を舞鶴まで、そこから若狭を目指すという道をたどる。しかしこの場合は、大きく宮津、天橋立近くまで寄り道をすることになる。別に天橋立観光をしようというわけではない。昼飯を食いに行く。ただそのためだけなのだ。JR宮津駅前の富田屋がその店だ。
別に飯食うならどこだってあるじゃないかという御仁は、一度覗いてみるといい。確かに地方都市の、駅前の、どこにでもある大衆食堂の風景だ。おまけに開店前から行列ができるし、すっと入れたためしがない。確かに、行列までして……と思う僕だが、同行者に騙されたと思ってと諭され並ぶことにした。待つこと小1時間。呼び込まれた店内は熱気でムンムンしていた。しかもここのおねえさん方は、非常に小難しい顔をして仕事をしておられる。そう、無愛想なのだ。いやいや、客に愛想を振り撒いている暇などないくらいに忙しいのだ。決して機嫌が悪いわけではない。知らんけど……。
その日のおすすめは白板にびっしり書き込まれている。何を食っても美味い。ハズレはない。
刺身、煮魚、焼き魚、天ぷら、アサリ酒蒸し……。じゃんじゃん頼んでどんどん食べる。運転する必要のないときはじゃんじゃん飲む。これがどれも注文してからそんなに時間をかけずに出てくるのだ。めちゃくちゃ混んでいるのに。帰り際に覗くとひろい厨房ではいかにも手慣れた料理人たちが目まぐるしく立ち働いていた。
客のほとんどが評判を聞きつけた旅行者だ。聞けば旅館もやっているという。
一度訪れるとまた来たいと必ず思うという。旅行、出張などで舞鶴や綾部に、あるいは我々のように若狭を目指すものまでが、せっかくだからちょっと寄ろうかという話になるのだ。並ぶのが面倒だ、愛想が悪い、そんなことはどうでもいいと思わせてくれる強烈な店なのだ。
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揺れて歩く人々の問い vol.84
今、沼にハマっていることありますか?
最近「沼る」とか「沼落ち」という言葉をよく耳にします。これは特定のものに深くハマってしまい、抜け出せなくなるような状態を指すそうです。一歩足を踏み入れてしまい、どんどんと引き込まれて、どんどんと深くのめり込み、気づいた時には抜け出すことが難しくなる。好きなモノやコト、もちろんヒト。そこらじゅうに沼は潜んでいるような……。そこであなたにおたずねです。今、沼にハマっていることありますか?モノでもコトでもヒトでもかまいません。どうにもこうにも抜け出せないそういう話を聞かせてください。
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M.Tさん
わたしもカメラです。Nikon4台ーーーただし1inchーーー、Lumix 4/3が5台、Lumix(バナライカ)コンデジ2台、オリンパス2台、初代GR1台、Nikonフルサイズフィルムカメラ1台、CANONフルサイズフィルムカメラ1台ーーー連れ合いは、わたしが、カメラを何台持っているか知りません。五つのカメラボックスに分散して、昔のベトコンのように、本棚、押入、コピー用品の中にバラバラにおいていますので。
それだけですね。足が抜けなくなってしまったのは。
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F.Mさん
長年ヌマってるモノと言えばオルカ(シャチ)です。
和歌山のアドベンチャーワールドで、はじめて出逢って以来30年以上愛が溢れまくりです。水族館に行けば数時間、帰るまでオルカの水槽前に陣取り、コミュニケーションを楽しんでいます。他の人がいても私の所に来てくれて、遊んでくれると言っても信じない人もいますが、一緒に行けば本当に私の所にばかり来てくれるの見て納得してもらえます。
そしてショップに寄れば新作オルカグッズを大人買いです。
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今回コメントを寄せていただいた方、ありがとうございます。詳しくはこちらをどうぞ。
https://www.facebook.com/groups/1651099238372682/posts/2968413299974596
次回84回目の問いかけは、折を見て「揺れて歩く人々の対話テーブル」にアップいたします。
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この1冊を読め!
「幸福な無名時代」G・ガルシア=マルケス
ちくま文庫 ISBN-10 : 4480030239 ISBN-13 : 978-4480030238
5度目の「百年の孤独」を文庫版で読み終えた。いつも感じることだが、それはマルケスの他の作品を読んでも感じることではあるが、どんなに幻想的なモノ、コトであっても、ものすごくリアリティがある。そう思うのは僕だけかもしれないが、「百年の孤独」だって錬金術とか、土ばかり食べる少女だとか、7214枚の金貨が隠されているとか、4年11カ月と2日雨が降り続くとか、不思議なことがたくさん出てくるけど、すごくリアルに感じる。
それは僕がマルケスの「幸福な無名時代」を何度も読んでいることがあるのかもしれない。彼がジャーナリストとして活躍していた頃のルポルタージュを集めた小品だ。文庫版で200ページほど。雑誌の記事となった13の作品が収められている。どれもがその後の作品の中に大きな影を落としている、というかそれぞれの出来事が作品の核をなす出来事となっている。
たとえば冒頭の2作『市民が通りを埋めた日』『戦う聖職者』ではマルコス・ペレス・ヒメネスの独裁政権を崩壊に導くベネズエラ市民の動きが語られているが、これは「百年の孤独」の保守党と自由党の争い、『杭につながれて四年』は〈この一族の最初の者は樹につながれ〉というホセ・アルカディオ・ブレンディアに描かれる。『1958年6月6日、干上がったカラカス』は真逆の4年11カ月と2日雨が降り続いたという話を思わせる。狂犬病に感染したロベルト少年を国境を超えた多くの人々が連携して救う『命の猶予は十二時間』は「愛その他の悪霊について」の冒頭を読むと、確実にその出来事がモチーフになったことを教えてくれる。
これだけでも、マルケスの創作の基本は、彼の実体験でありそこから彼自身が何を思い、何を考えたかということだと確信する。だから僕はマルケスの作品を読むたびに、それがどんなに幻想的だと言われても、その背景にあるリアルを感じてしまうのだ。
しかしマルケスは物語の中の現実性の背景にあるものを問われて「ジャーナリズム的からくりと言っていい」と語ったそうだ。「たとえば、象が空を飛んでいるといっても、ひとは信じてくれないだろう。しかし、四千二百五十七頭の象が空を飛んでいるといえば、信じてもらえるかもしれない」と。
ここに目をつけたのが村上春樹だな。比喩、暗喩の山だけど、細かい数字がやたらと出てくる。ジョギングに要する時間、パスタの茹で時間……。だけど村上がマルケスを超えられないのは、ジャーナリストとしての経験・体験があるかどうかかな。村上がもっと社会に関わるような活動を、現場に身を置いて経験していたなら、マルケスをとうに超えていたかもしれない。(✏️てつ)
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しみてつコラム
祖母さんのココロ
子どもの頃、そう小学校低学年の頃だ、僕はつっかけを履いて学校に通っていた。運動会の時は子ども用の白い地下足袋か裸足だった。3年生の時だった。運動靴が欲しいとねだると祖母さんが前にゴムのついた青いズック靴を買ってきてくれた。それはそれでうれしかったんだが、クラスでは紐で締める運動靴が流行っていて、僕はさらにそれがいいと駄々をこねた。だがそんなことで子どもの言いなりになるような大人は、我が家にはひとりとしていなかった。仕方なしに1日でも早く青い前ゴムのズック靴を履き潰そうとずいぶん乱暴な履き方をした。両足の親指のあたりがすぐに破け、新しいのを買ってもらえるチャンスが来るのだ。しかし祖母さんはその度にまったく同じ靴を買ってきた。僕は踵を踏んで履き、早く潰れろ早く潰れろと呪文のように呟いたものだ。
だけど今になって思うとずいぶん履きやすい靴だった。取材や撮影でバタバタしている時など、靴を脱いだり履いたりを繰り返す。時にはちゃんと履くのが面倒くさくて、子どもの頃のように踵を踏んだまま動き続ける。そうやって何足も履き潰してきた。で、思うようになった。子どもの頃に履いていたズック靴の大人用はないのかと。あれは確か月星製靴という会社だったな……。あるじゃないか。ムーンスターという社名になっていたが、子どもの頃に履いていたような靴もまだつくっていた。あの前ゴムのズック靴のようなものはなかったが、似たようなものがあった。
810s / ET020 EDU〔エドュ〕というおしゃれな名前だが、形も雰囲気もあの前ゴムのズック靴だ。値段も他のメーカーのものと比べるとずいぶん安い。これなら仕事用にいいかなと即買った。届いた靴を履いてみた。うん。思っていた通りの履き心地だ。軽い。
そうか……。60年以上経ってようやく祖母さんのココロが読めた。
「動きやすいのが一番やで、てっちゃん」
そう言って笑う祖母さんの顔が思い浮かんだ。それにあのズック靴を今頃思い出して探すなんて、なんだかんだ言いながら僕もけっこう気に入ってたんだな。
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【「揺れて歩く ある夫婦の一六六日」概要】
頁数:192p
体裁:B5変形横型(182mm×210mm)
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2020年4月15日 初版発行
価格:2420円(本体2200円+税)
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