INDEX
- 横目流し目 memento mori
- Prof. 田川の揺れる音楽道 #77
- 清水哲男のサンクチュアリ 倫敦屋酒場
- 揺れて歩く人々の問い vol.90
- しみてつコラム『立ち尽くす日々』
- ご購入のご案内
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横目流し目 memento mori
ずいぶん前から、そう40年くらい前からかな、テレビってあまり見なくなりました。理由は簡単なことでした。面白くないからですよ。あの頃は確か、エリマキトカゲとか、ソ連不参加のロス五輪とか、三浦なんとかのロス疑惑とか、グリコ・森永事件とか、元警官の連続殺人事件とか、投資ジャーナル事件とか、そうそう「おしん」もそうですね、何か話題が持ち上がるとテレビはそのことで埋め尽くされて、まるでどこを見ても同じことばかりで、金太郎飴みたいな状況でした。それまでもそんなに見ていた方ではなかったけれど、本当につまらないなあと思うようになり、とうとう見なくなっちゃった。その状態が今も続いています。
それは僕の状態が今も続いているということもなんだけど、テレビの報道姿勢もずっと変わらない。そのまんまって感じです。最近はテレビの番組をネットでも見られるようになったので、何気なく目にしてしまうこともあるんだけど、あの頃と何も変わってないなあとつくづく思います。ここ数日はトランプ次期アメリカ大統領にまつわること、韓国の戒厳宣言をめぐる混乱、フジテレビと中居何某のこと、空いた時間にガザのこと、ウクライナのこと、みたいな感じなのかな。すみません、テレビ見ないのでよくわかりません。
テレビ見なくても、ニュースは新聞で十分だしね。ネットの情報はあまり見ません。いい加減なこと言ってるのも多いようだし。特にSNSで流れてくる情報って、その多くがなんだか一方的な思いを押し付けたり、敵愾心を煽ったり、誹謗中傷だったりで、見ていて気分悪くなります。いやんなるね。この際、すべての文明を捨ててアーミッシュになろうかしらなんて思ってしまいます。それはそれでアーミッシュの皆さんに失礼だけど……。テレビを見る時間があるのなら、本の数ページでも読んだ方がマシだと、そんな心境なのです。
あ、そういえばお酒も飲まなくなりました。もう5年ほどになりますか。新型コロナウイルスへの感染が怖くて夜の街に出なくなったことが、そもそものはじまりでした。家で飲むのもなんだかね。だんだん飲まなくなり、気づけば全く飲まない日々が続いていました。そうなると毎晩みたいに街に出て、高い金払って、酔っ払って、そのあと何もできなくなっている自分がバカらしくなってね。あとどれくらい生きられるんだろうと思うと時間が惜しくなって、それなら本の1冊でも買って読んだ方がいいやと。テレビも酒もうつつを抜かしている場合じゃないなと年寄りは思うわけです。
memento moriが妙に身近に感じられるこの頃です。
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Prof.田川の揺れる音楽道 #77
With the passage of time
https://music.youtube.com/watch?v=dWyZPU5eUao
https://music.youtube.com/watch?v=dWyZPU5eUao
With the passage of time
Time, an unstoppable current, carries us all adrift. We wander aimlessly, layering fleeting memories over each other like seasons that come and go. Our ephemeral futures vanish like morning mist, leaving us adrift in a dreamlike state.
時間のまにまに
時間を止めることはできない。私たちは誰もが時間のまにまを彷徨っている。めぐりくる季節の中でめぐりゆく記憶を重ね、うたかたのように消えてゆく儚い未来。夢現に身を任せ漂い続けるだけ。
音楽:田川文彦
写真:清水哲男
制作著作:office432
©️office432&F.Tagawa, T.Shimizu 2025
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清水哲男のサンクチュアリ
倫敦屋酒場@片町1丁目,金沢市

金沢にはいい店が多いな。しかも京都みたいに気取ってないしね。試しに一晩か二晩飲み歩いてみるといい。僕はすっかり金沢という街が気に入ってしまった。
散々飲み食いした後、〆に落ち着いたバーでということになり連れて行かれたのが歓楽街片町の裏路地だった。僕の頭の中には金沢という旧い街にふさわしいオーセンティックなバーがあった。が、ここだと指さされた建物の外観はレストランかグリルか、そんな感じだった。「金沢でいちばんのバーですよ」と同行の粋人、いや酔人は笑った。だけど玄関の頭上には「STEAK」という看板が掲げられているではないか……。戸惑いながら連れの後を追って店内に。
いや驚いた。一歩足を踏み入れると両サイドに渋い棚が続く廊下が延びていた。それを抜けると大きなカウンターが。
「いらっしゃいませ! どうぞこちらへ」
蝶タイをビシッと決めたバーテンダーの声が。大きな声だったが広い店内のあちこちに反射して優しい響きとなって届いた。バーというにはかなり広い。大きくて長いカウンター。8人は座れそうなテーブルがひとつ。4人掛けがふたつ。奥にもスペースはひろがっている。蝶タイのバーテンダーはマスターの戸田宏明さん。その夜は奥さんもホールに立っていた。
雰囲気はあくまでもオーセンティックだが、このオーナーご夫婦が実に気さくだった。こういうバーでは飲み方だとか、振る舞いだとか、けっこううるさい店があるが、ここはそうではない。マスターはずっと喋りっぱなし。実に愉快だ。
さっとハイボールで喉を慣らして、何かウイスキーをと迷っていると「おすすめがあります」と。もちろん身を任せることにした。
樽から注がれたスコッチがショットグラスで出された。
「チェイサーを飲みながら、ごゆっくりどうぞ」
スコッチを飲りながらメニューに目を落とした。その品数の多さに目を見張った。チキン、ポーク、ビーフの肉料理。パスタ、ピザ、オードブル……。フィッシュ&チップス、Tボーンステーキにはそそられた。半端じゃないと思った。食事の後だったので断念したが、次はここで食事からという手もあるなと思った。玄関頭上の「STEAK」の看板は伊達じゃなかったんだ。
少々酔ったせいかマスターとの会話が盛り上がった。
倫敦屋は創業1969年で56歳になる。金沢、北陸の各界名士に育てられた。著名な文化人が集う。マスターも小説を書く。マスターのあとは息子さんが受け継ぐ……。そういえばバックバーに山口瞳さんの「今日無事」と書かれた色紙が飾られていた。コースターは山藤章二さんが描いた山口さんだ。僕も自分の仕事の話をした。すると「サインを」と。僕なんかと拒んだが、まあいいか旅の恥はかき捨てだと引き受けてしまった。後日SNSを見ると、著名な人の色紙に混じって僕のサインも棚に飾られていた。穴があったら入りたいとはこんな思いを言うのだろう。
マスターにはいい言葉を教えてもらった。
「行きつけの店はお人柄」
行きつけの店を見ると、その人の人柄がわかるというのだ。たしかにね。余計なお喋りをするよりも、行きつけの店を聞いた方が速いのだ。
Candy is dandy, but liquor is quicker.
そんな言葉が頭に浮かんだ。

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揺れて歩く人々の問い vol.90
「初詣に行きましたか? 行った人は何をお願いしましたか?」
どんなお正月を過ごされましたか? 初詣に行って、お屠蘇でお祝いして、お雑煮とおせちで1年のスタートをって、まるで昭和ですね。海外に行っていたという人もいるかもしれませんね。最大9連休ですもんね。初詣に行ってなどというのは少々古いのかもしれません。そこで90回目のおたずねです。「初詣に行きましたか? 行った人は何をお願いしましたか?」です。行かなかった人の行かなかった理由も聞かせてください。
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高山富士子さん
行ってないなあ。ずいぶん経ってから名古屋の家の近所の神社に注連縄預けに行ったら、もう燃やした後だったー、夜の神社真っ暗で逃げ帰ってきたー。
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松園功さん
はい! 初詣は熱田神宮の本宮から、別宮に摂社など五社を巡り、おみくじを引いて「半吉」というのを知りました。
ちなみに、お願いは何もしません。
神様も何でもお願い聞いていたら、叶えるねは無理です!昨年は無事に一年過ごせて、ありがとうございました。感謝します。と、唱えているだけですね。
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Masako Fujiiさん
2日昼から体調崩し5日まで疲労困憊で初詣は行けずじまいでした。
今年は新しい環境にも進む事も決まったのに、出足挫かれたので慎重に過ごさないといけないなと思います。
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Fumihiko Tagawaさん
12日に初詣行きました。遅いですが…
家族の健康をお願いしました。ベタですが…
世界征服が成就しますように!!とか願ってみたいです。
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古藤只充さん
今は神社総代長してますが神社で何かお願いしたことはありません😅 そんなので願いが叶ったら人生面白くないでしょう😜
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今回コメントを寄せていただいた方、ありがとうございます。詳しくはこちらをどうぞ。
https://www.facebook.com/groups/1651099238372682/permalink/3116814365134488
次回91回目の問いかけは、「あなたはトランプ大統領好きですか? 嫌いですか?」です。理由もあわせて聞かせてください。〈揺れて歩く人々の対話テーブル〉でのご回答よろしくお願いします。
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しみてつコラム
『立ち尽くす日々』

仕事場のネット環境がダウンした。まったく繋がらなくなったのだ。電力会社系の光回線を使っているのだが、問い合わせには異常なく建物まで届いていると。つまりは建物内の問題だということだ。しかし、ルーターも問題ないし、建物内のすべては正常に動作している。プロバイダーを見直そうということになった。結論が出るまでは、スマホのテザリングで急場をしのごうと。
ただしだ、大きなデーターの移動には限界があるし、動画の編集作業、書き出しなどはとんでもなく面倒な状況に追い込まれている。さらに、プリンターやカメラなどもWi-Fi環境がないとまったく使えない。ちなみにプリントアウトはスマホにデータを入れてコンビニまで走ってする始末だ。はじめはネット社会からのドロップアウトもいいんじゃないかなどと嘯いていたが、ここまで何もできないとは……。仕事場の天井を仰ぎ見て絶句する。
「まるで石器時代ですよね」
そう言って自嘲するしかない。こんなにまでネットに依存していようとは思いもしなかった。これでもし水道が止まったら、電気が止まったら、ガスが止まったら、完全におしまいだななどと思いハッとした。
能登半島ではそんな状態が長く続いていたのだ。いや、1年以上経った今も続いているところもあるのだ。大変だろうななどとは思っていたが、自分がネットというインフラの一部を失っただけで大変な思いをしているのだ。彼の地の人々のことを思うと心が痛い。
「自分のこととして考えないと」
とはかねてから言い続けてきたことではあるが、それがいかに言葉だけ、口先だけのことだったのか。人は実際に困難な状況に身を置いてみないと、誰かが置かれた困難な状況に思いを馳せることはできない。自分のいい加減さ、無責任さを思い知った。
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頁数:192p
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