横目流し目 そもそも、の話


写真は関西電力大飯原発のゲートのひとつです。原発は今の暮らしを維持するためにどうしても必要な電力だという人がいます。暮らしのため、社会のため、人の営みのために必要だと。だとするなら、原発は道具であり、技術であり、誰もに開かれた存在でなくてはならないのではないでしょうか。だけど、原発は人を拒みます。テロを警戒し反対の意思表示を黙殺するかのように門を閉ざし、ガードマンは近づく者を遠ざけるのです。カメラを向けようものなら、数人がかりで止めに入ります。その一方で、間近に展示館を建ていいことばかりをアナウンスしています。
電力会社は公共の名の下に排他的営業を続け、そのくせ富を独占しています。どんどん値上げをして、すごい利益を上げています。政治はそのおこぼれに預かっているように思えてなりません。原発はそういう者たちのためにあるといっていいのではないかと。電力供給が公共事業なら、内部留保などせずに全ての利益を顧客である国民に還元すればいいじゃないのでしょうか。「いやいや、電力会社は大規模な設備やインフラを運営していて、長期的な視点での資金計画やリスク管理が必要なんだよ」と言う人も多いでしょう。でも僕は思います。そんなの大丈夫だよ、と。いざとなったら国が面倒見てくれるから、と。それに、フクシマを見ればわかることだけど、そもそもリスク管理なんてできてなかったじゃないか、と。

撮ってはいけない写真を撮る@敦賀原子力発電所展示館

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INDEX

  1. 横目流し目 そもそも、の話
  2. 清水哲男のサンクチュアリ 近江屋今津酒店
  3. Prof. 田川の揺れる音楽道「THE FALLING BIRD」
  4. しみてつコラム「力みすぎぐらいが」
  5. ご購入のご案内

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清水哲男のサンクチュアリ

近江屋今津酒店@JR桃谷駅前,大阪市天王寺区


いやあ、プロだ、プロ。この店にやってくる客は、ほとんどがプロの飲み手という感じだ。
「今日もよく働いたから、帰りに一杯やって帰ろう」などという気負いなどない。ごく自然に暖簾を割り無言で入ってくる。店に立つねえさんか、カウンターの中のおばちゃんが空いているスペースを指し、客もそれに従って立つ。それぞれ酒とアテを注文する。酒は瞬時に出てくるし、アテだって酒を追いかけてすぐに出てくる。あとは黙々と飲み食う。時々隣り合わせた客同士短い会話を交わし、そしてまた飲み食う。
4人、5人のグループでやってくる客はほとんどいない。ほぼ1人客、たまに2人という感じだ。そして長居をしない。さっさと飲んで食って出ていく。初めて入った時、客がみんないかつい顔をして飲んでいるなあと思った。だから店内の雰囲気は和やかなどということはない。ねえさんやおばちゃんの客あしらいも時につっけんどんに感じることもある。しかしその空気が実に心地いいのだ。ありのままの自分でいい。無理をして愛想を振り撒くことはないのだ。酒もアテもすべてが安い。当然千ベロなどというものはない。わざわざそんな客に媚を売るようなことをせずとも安くで酔える。ここにくる客はそのことを十分承知している。
酒場ではありがちだが、自分のことを殊更声高に話したがる客もいない。それぞれがそれぞれの素性など気にしていない。ここでは完全に「酒の下の平等」が貫かれているのだ。一杯の酒に同じ金を払えば誰だってみな平等なのだ。地位も名誉もここでは通用しない。まさに酒飲みのサンクチュアリなのだ。
店を出て振り返る。「近江屋今津酒店」と染め抜かれた暖簾が掛かる。「近江屋今津酒店」なのか「今津酒店近江屋」なのか……。そんなことはどうだっていいのだ。ここにくればこの店がある。それで十分なのだ。

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Prof.田川の揺れる音楽道
THE FALLING BIRD


https://youtu.be/uS-zQBulH8Y
THE FALLING BIRD
It’s strontium. It’s cesium. Falling from the sky, shining. As I watch with a furrowed brow, it turns into a bird.Birds are falling from the sky. Falling while shining.
空から落ちる鳥
ストロンチウムだ。セシウムだ。光りながら空から降ってくる。顔を顰めて見ていると、そいつは鳥になった。鳥が空から落ちてくる。光りながら落ちてくる。
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しみてつコラム
力みすぎくらいが

「人間臨終図鑑」(角川文庫山田風太郎ベストコレクション 上・中・下巻)

死が生にいう。「おれにはお前がわかっている。しかし、お前にはおれがわかっていない」

山田風太郎「人間臨終図鑑」に登場する山田自身の言葉だ。
この本は923人の著名人(犯罪者も含めてだ)の臨終様子が綴られる。死に方のオンパレードだ。僕はこの本が好きで、もう何度か読み返している。そんなことを言うと、
「なんでそんな本が好きなのだ」
とよく言われる。気持ち悪いとでも言うように眉間に皺を寄せて。
「イメージトレーニングをしているんだよ」
そういう時は笑ってそう答えるようにしている。
結局、生きる者にとって死は大きな関心事であるのに、その時が来るまで絶対経験不可能であり、その時すら自覚的に経験しているかどうかさえわからない。たとえば僕の父は癌死に際してモルヒネを拒み苦しみながら死んだ。苦しかっただろうが、死の瞬間はどうだったろう。わかっただろうか。母は98歳11カ月で死んだ。老衰だった。直前の2日間は眠り続けそのまま死んだ。おそらく自分が死んだことにも気づいてないのではないだろうか。死んでみたって、死ぬとはどういうことかわからないのだ。だからこそのイメージトレーニングなのだ。
しかし、と思う。トレーニングを積んだとしても、死の意味などわかるはずもないと。実際「人間臨終図鑑」に並ぶ著名人たちは、死を拒み、抗い、その果てに諦めて去っていく。死は如何なるものかを喝破して死んでいく者などいない。読み進むにつれ死ぬ意味を考えるより、生きた意味を考える方が大切だと思えるようになる。山田風太郎はそこを目指したのではないか。
寺山修司48歳、ジャック・ケルアック47歳、ジャニス・ジョップリン27歳、ジミ・ヘンドリックス37歳、ボブ・マーリー36歳、星野道夫44歳、アルベール・カミュ46歳、ジョン・コルトレーン40歳、アルチュール・ランボー37歳、中原中也30歳、太宰治39歳、マーク・ボラン29歳、チャーリー・パーカー34歳、エリック・ドルフィ36歳、エルネスト・チェ・ゲバラ39歳、三島由紀夫45歳、アイルトン・セナ34歳、ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト35歳、松田優作40歳、中上健次46歳、アンディ・フグ35歳、津田恒美32歳、山際淳司46歳、キース・ヘリング31歳、ジョン・レノン40歳……。
大好きな人たちの享年だ。大きな仕事を残し、いやその途上で亡くなった人ばかりだ。今の僕よりずっと若くしてこの世を去っている。彼らは、人が生きた意味は生きた時間の長さとなんの関係もないことを教えてくれている。ただ目指すところを全力で徹底的に目指す。そのことの大切さを教えてくれているのだ。
死ぬことのイメージトレーニングなんて時間の無駄だな。
困難や苦難に直面した時にどう生き抜くか、そこに力を注がなくては。そうしてしが訪れるその日まで、全力で生き抜かなければ。ちょっと力みすぎか……。
全力とか徹底的とかいう言葉が全く似合わない生き方をしてきた僕は、うっかりしていると死に足元をすくわれてしまいそうだ。力みすぎくらいがちょうどいい。

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