INDEX
- 横目流し目
- Prof. Tagawa の揺れる音楽道 #94
- 清水哲男のサンクチュアリ 大旦那天満本店
- 揺れて歩く人々の問い
- しみてつコラム Good Times Bad Times
- 清水哲男新刊書のご案内
- ご購入のご案内
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横目流し目 叱られて
自民党の新総裁が決まって僕の周りのリベラルな人たちの落胆ぶりは相当なものがあります。「たかがひとつの政党の党首が変わるだけじゃないか、どうしてそんなに落ち込むの?」と聞くと、「だってそのままこの国のトップに立つんじゃないか。それがあんな超右翼タカ派の人間なんだよ。憂鬱にならない方がおかしいじゃないか!」って叱られちゃいました。よくそんなに無関心でいられるなあ、と。
別に無関心なんじゃなくて、何を今さらと言うのが僕の思いです。敗戦後80年対外的に一切戦争をせず平和を維持してきたこの国にも、その間ずっと平和憲法を否定し、武力を背景に国際的な地位を確保しようという戦前の亡霊のような勢力が拡大してきたことは事実です。それがここしばらく、そう安倍某という政治家の出現によって一気に勢いを増したというのが今につながっていると、僕は思います。しかも、政治・経済・宗教・文化などいろんな分野の保守・右派が一体となって時代、社会の保守・右傾化に必死と言っていいくらい力を注いできたのだと。
僕もリベラルな人間の一人であることを自認しています。では僕が今から何をすべきか。落ち込んだり、憂鬱になったりするんじゃなくて、自分が活動する分野、僕の場合は文化なんだろうな、そこで右派の彼らがやってきたような努力を上回る努力をしなければならないと思っています。
もちろん自分のためではあるけれど、息子たちや孫たちが戦場に行かなくてもいい世の中を守るために。
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Prof.Tagawaの揺れる音楽道 #94
Human Landscape
A landscape is something created by people. The scenes and events that unfold before us are always underpinned by human life and emotion. It is a view, whether good or bad, that leaves a strong impression on the heart—a scene actively contemplated by an individual, upon which their feelings and experiences are projected.
Music by F.Tagawa
Photo by T.Shimizu
©️F.Tagawa, T.Shimizu & Office432 2025
人がつくり上げる風景
風景とは人がつくり上げるものなのだ。目の前に繰り広げられる場面や出来事は、必ず人々の暮らしや情感に裏打ちされている。
良くも悪くも心に強く印象づけられる、人が主体的に見つめ、心情・体験が投影された景色なのだ。
音楽:田川文彦
写真:清水哲男
制作著作:清水哲男事務所
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清水哲男のサンクチュアリ
大旦那天満本店@天神橋筋五丁目, 大阪市北区
JR天満駅から徒歩3分。平日でも人通りの多い天神橋筋商店街を細い路地に切れ込んだところに目指す大旦那天満本店はある。間口いっぱいに暖簾がかけられビールケースが堆く積み上げられた風景は、まさに昭和の大衆酒場と言っていいだろう。この年季を感じさせる佇まいは昨日や今日の開店では無理だな、相当長く営っているに違いないと勝手に思い込んでいた。が、2017年の開店だというではないか。7年、8年でこの味のある空気が醸し出せるのだ。これは余程のプロの飲み手が足繁く通いこの店を育ててきたに違いないと思った。
店の前であれやこれやと思っていたら中から客が出てきた。タバコを吸いに出てきたものだとばかり思っていたが、入り口の横に置かれたクーラーボックスの中からビールを選んで栓を抜き店内に戻っていった。
〈手前がよくひえています。手前からお取りください〉
クーラーボックスにはそんな説明書きが。どうやら瓶ビールはセルフのようだ。しかも300円(税別)と。冷やされているのは633ml、大瓶だ! 大瓶が300円。まさにサンクチュアリにふさわしい、いや夢の値段と言っていい。何本飲もうが制限なした。ただし正午のオープンから17時までの間だが昼飲みには十分過ぎるだろう。我々はマルエフとキリンラガーを抜いて持ち込んだ。
20人は座れるだろう長いカウンターと6人掛け、4人掛け、2人掛けで30席、あわせて50席という広い店内は開店の正午を少し回ったばかりだったがほぼ満席状態だった。「プロの飲み手」という言葉を使ったが、フラッとひとりで入ってきて、ちょこっとつまんでさっと飲んで、スッと出ていく、しかし毎日来るみたいな常連客を思い描いて言ったのだが、ここはそういう客ではなく結構長っ尻の客が多い。しかもグループでワイワイガヤガヤ楽しんでいる客がほとんどだ。カウンターもひとり客というよりカップルや3人連れで、とにかく賑やかだ。「昼から飲める昭和の居酒屋」だとは聞いていたが、客の雰囲気はそうでもないな。店の設えがそういう空気を醸しているのだろう。
あまりビールを飲む方じゃないが、こう安くてはビールをということになる。肴もビールにあうものになる。とりあえずはここの名物ということで黒どーふ(肉どうふ670円)と蒸し豚キムチ(470円)を注文する。黒どーふは肉の量が半端ではなかった。それは蒸し豚も同じだ。最近はピンチョスなどというものが流行り、ひと口サイズじゃあないかという肴が出てくることも少なくない。だがここはそんな心配はないようだ。しかも味もなかなかだ。蒸し豚キムチは添えられたキムチ、辛味噌がいい。それだけでもビールがすすむ。
酒盗ポテサラ(430円)が目にとまった。これは単にポテサラに酒盗を乗せたり混ぜたりしたものではなかった。どういう工夫がされているのか酔った頭ではわからないが、間違いなく酒がすすむ。他にも冷奴酒盗(380円)、酒盗キャベツ(390円)と酒盗を使った肴がある。我々はさらにキリン一番搾りとカモのタタキ(590円)を追加した。こういう酒呑みを唸らせるような種類豊富な肴がプロの飲み手が集う昭和の酒場という雰囲気をより色濃く醸し出しているのかもしれない。
さて会計だが〆て税込4130円と5000円を超えなかった。昼飲みにはちょうどいい頃合い、かな。しかし大旦那という店名、これはこの店を営っている経営者が太っ腹の大旦那だという意味かもしれないな。ビール大瓶300円には恐れ入った。
大旦那天満本店
大阪市北区天神橋5-7-3
050-5593-6024
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揺れて歩く人々の問い
もし戻れるとしたら何歳の頃に戻りたいですか?
なんだか失敗、後悔ばかりの毎日です。俺の人生こんなはずじゃなかった……、などと思ってみてもはじまりませんが、もしも1度だけ過去に戻れるとしたら、あなたは何歳の頃に戻りたいですか?
写真は7歳の清水哲男です。こんな時代があったんですねえ。
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古藤只充さん
子供の頃から生まれてこなければよかったなんて思ってるような人間だから、戻れるものなら有機物になる前に戻りたい😅
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高山 富士子さん
いまでええです♫
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松園功さん
私も高校生まで戻ると、別の人生になる気がします。
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Masako Fujiiさん
何故かは申しませんが27年ほど前に戻ってみたい気もしますが、まぁ結果オーライ。
今もまぁまぁ楽しく暮らしております。
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Fumihiko Tagawaさん
別の人生っという意味で、高校生まで戻って大学に行かず、料理人の道を歩んでみたい気がします。
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能勢厚さん
小学校一年生の夏指宿の喘息養護学校の寮に入寮して姶良町に帰ってきてからの、数年間、祖母とも、暮らせたし、そのあたりです。
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コメントいただいた皆さん。ありがとうございました。コメントは以下のページからもご覧いただけます。
https://www.facebook.com/groups/1651099238372682/posts/3375949635887625
次の問いは次回ライブ配信時にお知らせします。〈揺れて歩く人々の対話テーブル〉でお気軽にコメントくださいね!
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しみてつコラム
Good times bad times
中学校に上がった頃から同級生Kのお兄さんの影響でブルースやロックにに夢中だった。影響と言ってもお兄さんが大学に通っている留守の間に勝手にレコードを聴いていただけだったが、どこで手に入れるのか知らないが国内では売っていないようなレコードがたくさんあった。お兄さんはクリームというバンドのギタリストエリック・クラプトンに憧れてプロのミュージシャンを目指していると聞いた。長髪で、いつも花柄のシャツに裾のひろがったジーンズ、そうして小脇にはいつも何枚かレコードを抱えていた。それが眩しいほどカッコよかった。
Kはお兄さんが新しいレコードを手に入れると必ず教えてくれた。それは聴きにこいよという誘いだった。
同級生たちはグループサウンズやフォークソング、あるいはビートルズなんかを、ちょっとワルぶった連中はローリングストーンズなんかを聴いていた頃だ。Kと僕はちょっとした優越感に浸りながらお兄さんのレコードを聴いていた。なかでも僕らのお気に入りはエヴァリーブラザースで、お兄さんの見様見真似でギターが上手かったKの伴奏で“Let it be me” や“Bye Bye Love” “When will I be loved”などを歌うようになった。
そんなある日のこと、Kの家でレコードを聴いているとお兄さんが予定よりも早く帰ってきた。勝手に聞くんじゃないと叱られるんじゃないかと身構えていると
「おい、これを聴いてみろ。すごいぞ!」
と1枚のレコードをKに手渡した。燃え上がる飛行船に”LED ZEPPELIN” の朱色の文字。聴くまでもなくなんとなく胸がザワザワした。針を落とした瞬間、それは衝撃に変わった。ギターもドラムスもベースもそしてボーカルも、何もかもが新しかった。世界は動いてる。そう感じたことを覚えている。Kと僕は、いつかは新しい音楽をと話し合いながら中学を卒業するまで二人で歌をうたっていたが、別々の高校に行きそれきりになってしまった。もちろんKのお兄さんとも。お兄さんはもちろんだがKもプロを目指すと言っていた。
映画「BECOMING LED-ZEPPELIN」を観た。照明が落とされ暗闇の中に”Good Times Bad Times”のギターとドラムスが響いた時、55年ぶりにあの衝撃がよみがえった。2時間ほどの間、僕はずっとKや彼のお兄さんのことを思い出しながら、音楽と映像に身を任せていた。照明が戻ってきた時何故だかふ〜とため息が出た。歳をとったな。なんだかそんなことを思ったんだ。
Kもお兄さんも自分が思い描いた未来にたどり着いただろうか。僕はと言えばいいこともあれば悪いことも、たくさんあった。でもなんとなく今の自分に、決して満足ではしていないが納得はしている。
Kに連絡してみようかと思ったがやめた。思い出話をするだけなんてとってもダサいし、彼は彼で納得の人生を歩いているだろうから。それでいいや。
映画館を出てカットハウスに向かった。パーマをかけてくれというとどんなイメージでと聞かれた。まわりが驚くほどの勢いで答えた。
「もちろんジミー・ペイジみたいに!」
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最後までおつきあいありがとうございました。
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