あ〜 忙しいです。同時開催写真展の準備に追われています。追われまくって種子島を5泊6日で走り回りました。出展写真に登場する皆さんに、写真使用の承諾を得る旅でした。みなさん快く承諾してくださいました。撮影後、長い人で10年ほど経った人もいました。中には亡くなっていた方もおられ、ご遺族を訪ねその後の人生の話を聞いたりもしました。人を写すということは、その人の人生を写すことなのだと改めて考えさせられた清水哲男です。
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清水哲男関連イベントのご案内
種子島からはじまる〈日本を探す旅〉
私は旅する作家・写真家だと受けとめられている。
確かにそうだ。私は旅に明け暮れている。しかしそれは〈場所〉をめぐる旅ではなく〈暮らし〉をめぐる旅なのだ。〈暮らし〉がこの国の〈文化〉を生み、〈歴史〉をつむぎ、この国の〈今〉をつくっていると確信しているからだ。私の旅の目的は決して〈標準化〉されることなく積み上げられ堆積してきた〈そこでしか見ることのできない〉暮らし、文化、〈そこでしか受け継ぐことのできない〉伝統、歴史をつぶさに見ることにある。
そういう私にとって種子島は、この国、ニッポンの文化の姿を様々に見立てることが可能なこの国の縮図なのだ。〈日本〉という島嶼は様々な文化が接点を持ち、吸収・融合・発展を繰り返してきた。その根拠がこの島嶼のあちこちに点在しているはずだ。そしてその縮図が種子島だと私は考えている。私は〈日本を探す旅を〉ここ種子島からはじめるのだ。(清水哲男)
清水哲男写真展「種子島物語 文化打ち寄せる渚にて」
会場:JARFO京・文博
京都市中京区三条高倉京都文化博物館別館
会期:2022年4月20日(水)〜5月8日(日)
11:00〜18:00(最終日は16時まで)
決定!清水哲男の鹿児島での久々の写真展は陶芸家との二人展です。
仕事を舞台に続けた対話・対酌の形をお楽しみください。
僕がただ漠然と竹之内彬裕氏の仕事風景を撮りだしたのは2009年1月のことだから、もう13年あまり撮り続けてきたことになる。カメラを向け、多くを語り合い、飯を食い、酒を飲む。そんな日々を重ねきた。2019年1月からは「竟の仕事」という明確なテーマを設けた。人生最晩年の仕事の風景をということだ。しかし、ますます旺盛にパワフルになっていく氏の創作意欲に写真を撮らされている僕がいた。今回はその〈力〉が「匣」の中に込められた。蓋を開けた時、そこにはいったいどんな世界がひろがるのか、楽しみでならない。(清水哲男)
竹之内彬裕×清水哲男 陶匣と写真で綴る陶芸家の日々訥々
会期:2022年4月24日(日)〜5月15日(日)
開場:11:00〜18:00(最終日は17:00まで)
会場:蒲生和紙ギャラリー
〒899-5307 姶良市蒲生町久末2409-2
TEL (0995)52-8993
入場:無料
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Prof. 田川文彦の揺れる音楽道
「TAKUMI」
「揺れて歩く」 Soundtrack より https://soundcloud.com/yurete_aruku
「TAKUMI」https://soundcloud.com/yurete_aruku/takumi
指物を作り続けてきた職人の魂。槌音はさながら心臓の鼓動を思わせる。
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しみてつコラム「邂逅」
このおじさんにはどうしてももう一度会いたかった。もう6年も前に種子島のとある酒場で一夜を飲み明かした漁師のおじさんだ。顔全体に深く掘り込まれたような皺が、笑うと一段と深くなった。そこにはなんとも言えない、このおじさんにしか醸し出せない味が漂っていた。写真を撮りながら、こういうのを人生が顔に出るっていうんだなと思った。
今回の写真展「種子島物語」では、このおじさんの写真をメインのひとつにしたいと思い、どうしても出展と写真集の掲載への承諾をとりたかった。撮影させてもらった時に、おおよその了解はとってはいたが、やはりきちんとことわっておくべきだと思ったのだ。
出会った酒場に出かけた。大将の話では数年前に亡くなったらしいと。だが、一緒に暮らしていた女性がいるということで、その女性を探してもらうことにした。2日後、「見つかったよ」と大将から連絡をもらってその酒場に出かけた。
彼女はカウンターにもたれかかるようにして座り待っていてくれた。事情を話すと彼女はとても喜んでくれた。そうして手渡した紙焼きのコピーを胸に抱くようにして言った。
「会いたかったよう」
その一言で、このおじさんとの巡りあいは、僕の宝物になった。
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