INDEX

  1. 横目流し目 40年目の風景
  2. Prof. 田川の揺れる音楽道 Flaneur : A generation lost in the digital age.
  3. 清水哲男のサンクチュアリ ハイライト食堂十条店
  4. 揺れて歩く人々の問い Vol.80
  5. しみてつコラム「よしえさんの店」
  6. ご購入のご案内

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横目流し目 40年目の風景

「軍艦島がマンモス島みたいになっちゃった」と地元の人

40年ぶりにその風景を見たいと思いました。
はじめてその場所に行ったのは19歳だったから、50年前のことだ。今は輪島市の一部となっている門前町出身の大学同級生がいて、彼の実家に長く滞在し能登半島の隅々まで歩きまわりました。その時の経験がその後の僕の在り方を決めたかもしれないなと思えるほど半島で出会った人々、出来事、さまざまな事物は濃厚で、人生を放浪するかのように生きる僕の原点になりました。
それ以降20代で、僕は能登半島を何度となく歩きました。なかでも僕が一番好きだったのは国道249号と並行して海沿いを走る、能登町松浪から珠洲市に至る内浦街道です。恋路海岸という砂浜が続き、真ん中あたりに見附島、国鉄の恋路駅があり、縁結びの聖地となっていました。大勢の恋人たちが微笑み合うそばを、リュックを背負って汗臭い僕が通り過ぎる。そんな自分の姿を思い出すのは懐かしかったり、恥ずかしかったり、ちょっとは大人になれたかなと思ってみたり、ああ、でもやっぱり成長してないよねってがっかりしたり……。
その恋路海岸が今年1月1日の地震で大変なことになっていると聞き、自分の目で確かめに行ってきました。自分の足で歩いたのではなく車を運転してもらって、40年ぶりにその場所に立ちました。
見附島は別名軍艦島と呼ばれる少々異様な姿の小さな無人島でした。引き潮の時はすぐ真下まで行けるのですが、見上げるその姿は本当に軍艦のようで、少々威圧感を醸していました。それがあの地震で崩れ落ちてしまったのです。地元の人にとってはそこに当たり前のようにあった島の姿が、一瞬にして激変してしまったのです。久しぶりに見た僕だってショックでした。地元の人のショックは言うまでもないでしょう。
でも、恋路海岸見附島の崩壊は、奥能登全域で起こっていることなのです。あれから7カ月が経とうとしています。ショックを乗り越えて地元の人は前へ進もうとしています。僕は見附島の姿、恋路海岸の風景を40年ぶりに目の当たりにしながら、ぼうっとただ眺めているだけの自分に愕然としました。前へ進もうとしている地元の人たちをもっともっと応援しなくてはと思うのですが、それをどう言葉に表していいかわからないのです。人生の大半を言葉を生業として生きてきたのにわからないのです。

恋人たちのための縁結びの鐘もさみしそうに見えた。僕らの他には数人の人が訪れているだけだった

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Prof.田川の揺れる音楽道

Flaneur : A generation lost in the digital age.

https://www.youtube.com/watch?v=wS5Il7uyaZQ
Flaneur : A generation lost in the digital age.
We have become so engrossed in the digital realm that we are drifting away from the tangible reality of our world. The act of venturing out to engage with diverse people, objects, and occurrences, and to perceive the world through our senses, has been replaced by the allure of virtual experiences.
フラヌール:デジタル時代に迷える世代
我々はデジタル世界に深くさ迷い込み、現実世界とのつながりを失いつつある。
街に出て様々な人、事物、事件に出会い、五感を使って世界を感じ取ることをやめ、デジタル空間での仮想体験に埋没している。
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清水哲男のサンクチュアリ

ハイライト食堂十条店@十条京阪国道西入,京都市

ちょうど昼時。店内はごった返していた

昼飯時、晩飯時だけではなく、1日を通して労働者、勤労者で賑わう本当の意味でのサンクチュアリだ。ハイライト食堂は京都市内に御薗橋店、百万遍店、衣笠店、御池店、そしてこの十条店と5店舗を数える。しかし僕はもっぱら十条店だ。ここが地元なのだ。百万遍の本店のオープンは1960年。今年は創業から64年ということになる。
HPを覗くと「地方から出てくる学生さんに家庭料理のような愛情のこもった食事を安価でおなか一杯食べてほしい」というのが創業者の思いだとか。確かに百万遍は学生のまちだ。さらに「京都の学生や腹ペコさんたちの胃袋を満たしてきた定食屋として日々、営業を続けています」と。
僕も間違いなく腹ペコさんの1人だった。お気に入りはジャンボチキンカツ定食だ。徹底的に叩きまくって伸ばしに伸ばした鶏肉のカツが、皿から完全にはみ出している。そこにハイライト食堂自慢のソースがたっぷりかかっている。ご飯も他の店では大くらいなのが普通に出てくる。昼間に食えばパワーランチ、夜に食べればパワーディナー。いずれにしてもパワーの源なる。十条店は流石に学生は少なく、ほとんどが労働者、勤労者だ。ジャンボチキンカツを見ただけで、人気の理由が頷ける。もちろん美味いに決まってるだろ。これをがっついて食べるのは、あるいは人が食べている風景は、見ているだけでとても幸せだ。メインはもちろん揚げ物だが、たとえば餃子鍋、キムチ鍋などというのもイケる。
京都に遊びにきて、雅やかな世界に浸るのもいいが、こういう店で京都の庶民パワーというか、バイタリティを感じてほしいな。京都は町衆のまちなどとはとんでもない。京都は労働者、勤労者、そして学生のまちなのだ。庶民のまちなのだ。
このボリュームたまらんね

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揺れて歩く人々の問い vol.80

あなたは何上戸?


特にお酒を飲んだ時に普段隠れていた顔が出てくるようです。それをまとめて⚪︎×上戸(じょうご)などというようです。さてさてあなたは何上戸でしょう?
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M.Yさん
自分の場合は飲むと「ニコニコ笑い上戸」から始まりやがて「ニヤニヤ」に変わり、最後はニタニタした「エロ上戸」になるらしいです。爽やかな笑い上戸のままならモテるんでしょうけど残念です。
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D.Sさん
笑い上戸です。笑うというよりずっとヘラヘラしてます。「ヘラヘラ上戸」ですね。そんなのあるのかどうか知らんけど……。
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H.Gさん
「注ぎ上戸」です。自分があまり飲めないので、酔うとしつこいほど人に注いで回っています。
ーー
M.Fさん
そんな言葉はないけれど「かまい上戸」やと思います。
普段は人と話すの苦手やけど、行きつけの店で呑むといちげんさんで来はった隣の人に気に入って帰ってもらいたいと、これ美味しいですよ~とか声かけしちゃいます。
英語全く話せないのに異国の方にも勇猛果敢に『サマー・ノー・オデン』(「夏におでんはない」のつもり)とか。
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M.Tさん
「お笑い芸人上戸」かなぁ⁈ あるいは、最後は這って帰るから「トカゲ上戸」かなぁ⁈
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今回コメントを寄せていただいた方、ありがとうございます。詳しくはこちらをどうぞ。
https://www.facebook.com/groups/1651099238372682/posts/2943966225752637
次回81回目の問いかけは、折を見て「揺れて歩く人々の対話テーブル」にアップいたします。
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しみてつコラム
よしえさんの店

よしえさんは元気で美しい

小雨が降るならまちを歩いていた。アーケードの中は人が多いが、一歩小路に入ると傘を叩くかすかな雨音しか耳に入らない。京都とはまた違う風情がある。俗化されていないというか、ああ、昔の京都もこんなだったなあなどと家並みを眺めながらゆっくり歩く。
夕方飲みに行く店は決めていた。だがまだ早い。それまでのつなぎにどこかいい店はないかと。同行者が前にたまたま入った店がよかったというので、その店を探した。あった。カフェたまき。今時のカフェというほどおしゃれではなく、普通の民家の玄関に暖簾をかけ、軒に提灯をぶら下げ、店内を紹介するフレームが少々。だがよく見ると反対側の小窓にはガラスではなくステンドグラスが収まっている。
玄関の引き戸をガラガラと開けて中に。カウンターの向こうに女性が1人。6人も座れば満席のカウンターと、テーブル席がひとつ。昔懐かしいスナックという感じだ。
「いらっしゃい!」
明らかに酒焼けをした塩辛い声が飛ぶ。間違いないここはスナックだ。だがママらしき女性が続けた。
「お酒はビールだけね。ビールセット。ビールに一品つけるの」
と。躊躇なくビールを頼む。出てきた一品の小鉢は刻んだオクラだったが、こいつが凍っているのだ。
「ごめん! 冷凍庫に入れて出すの忘れてた! シャーベットオクラ!」
ママはいたって陽気だ。昔はどこの飲み屋にもこんなおばさんはざらにいたな。昭和なスナックの感じがいいというと、
「昔は大阪でスナックをやってたのよ」
と着物姿の自分が写った写真を見せてくれた。それが、予想以上に美しかったりするのもよくあることだ。
合間に常連客が来てコーヒーを頼む。すかさずママの声が飛ぶ。
「買い物に行って来てくれへんかなあ。夜の準備ができてへんねん」
常連客は嫌がるそぶりなど見せずに、エコバックを受け取りいそいそと出かけて行く。多分ここは近所の人たちの溜まり場になっているのだろうな。バックバーには小窓があってそこから茶の間のテレビが見える。相撲をやっていた。眺めながらゆっくりビールを飲る。ママはその間もずっと喋り続けている。かと思うと突然奥の厨房に入りなかなか姿を現さない。とにかくマイペースだ。客は喜んでそのペースにはまる。店は朝の10時から開いている。だからビールは朝から飲めるのだ。
「早くから開けてたら、誰か入ってくるわよ。あんたみたいにね」
と塩っ辛い声で笑った。なんとも破壊力のある声だ。
たまきよしえさん。それがママの名前だ。だからカフェたまき。これがカフェよしえだったら完全にスナックだなと表の提灯に「よしえ」と入っている風景を思い浮かべて心の中でクスッと笑ったが、必ずまた来たいなと思った。そうして「買い物行って!」と言われたら、うれしそうに行くのだろうなと。

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頁数:192p
体裁:B5変形横型(182mm×210mm)
ISBN:978-4909819086
2020年4月15日 初版発行
価格:2420円(本体2200円+税)

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