INDEX

  1. 横目流し目
  2. Prof. 田川の揺れる音楽道 #78
  3. 清水哲男のサンクチュアリ 居酒屋藤忠
  4. 揺れて歩く人々の問い vol.91
  5. しみてつコラム『断絶』
  6. ご購入のご案内

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横目流し目 まちの将来は誰が決める!?

とある土曜日の夕刻。ある商店主は「人が少ない」と嘆いた

1週間ほど前のニュースを見て「えっ!?」と思った鹿児島の人も多いのではないでしょうか。
鹿児島県が鹿児島港本港区(旧ドルフィンポート跡地)に計画している新しい総合体育館の事業費が大幅に増える見通しのなか、天文館の通り会など天文館4団体が、塩田鹿児島県知事に建設の推進を要望しました。いわゆるスポコン計画というやつですね。資材や人件費の高騰などで去年9月入札が不調に終わりました。245億円から313億円に増えた事業費は、さらに500億円近くに増える可能性があると言います。天文館の4団体は「事業費が上がっても計画が止まることはあってはならない」として「周辺地域ににぎわいを波及させるため、現在の規模での建設」を要望したというニュースが流れたのです。
4団体のうちWeLove天文館協議会の会長さんは「観客やスポーツ選手が天文館に流れて来ていただく。そういう交流人口が増えたら非常にうれしい」と知事におっしゃったそうです。鹿児島市商店街連盟の会長さんは「中心市街地はずっと天文館を中心に人が減っている。賑わいが戻ってくることを期待している」だから事業費が増大しても計画を実現すべきだと。
鹿児島県の予算ご存知ですか? 令和6年度の当初予算案で言うと8527億円だそうです。500億円というと、その6%ほどになります。それを「観客やスポーツ選手が天文館に流れて来ていただく。そういう交流人口が増えたら非常にうれしい」とか「中心市街地はずっと天文館を中心に人が減っている。賑わいが戻ってくることを期待している」とかを理由に……。これって何かおかしくないですか? あたかも自分たちのために500億円出してくれと言っているようなものです。
ぼくは天文館に巨額の補助金を投入して建設されたシネコンを思い出しました。まちづくりの核に、地域活性化の起爆剤にと、シネコンをゴリ押ししたのが今回知事に要望書を出した人たちなのです。その後のシネコンはどうなったでしょう。どうもこの人たちは「箱」をつくれば解決すると思い込んでいるようです。そのおこぼれに預かれば天文館というまちは生き延びられるという。シネコンやスポコンは天文館にとって
この時代、大切なことは「箱」をつくることより、多くの人の心をつかむコンテンツを充実させることではないでしょうか。そう、自分の頭で考えるということです。それができない限り、どれだけ公金を注ぎ込んでも天文館の交流人口は増えないだろうし、地盤沈下は止められないでしょう。旧ドルフィンポート跡地にスポコンが実現しても、それは止められないと。
私たちもよく考えなければならない時期に来ていると思います。まちの将来は誰が決めるのかを。(文責:清水哲男)
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Prof.田川の揺れる音楽道 #78

BABEL

Babel
Let us reach out to the heavens, to the realm of the divine. Let us build a tower that stretches that far. Like a dream that can never be fulfilled, foolish towers stand here and there. People will eventually realize their transience.
バベル
天にも届く神の領域まで手を伸ばそう。そんな塔を建設しよう。決して成就しない夢を描くように愚かな塔があちこちに立つ。人はやがてその儚さに気づく。
music by Fumihiko Tagawa
photo by Tetsuo Shimizu
©️office432, F.Tagawa & T.Shimizu 2025
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清水哲男のサンクチュアリ
居酒屋藤忠@本町通り京阪・JR東福寺駅前,京都市

実に居心地のいい店だった。縄のれんを割って入ると、間口は狭いが京都らしい奥行きの深い造りの店だった。立ち飲みの長いカウンターにテーブル席が3つ。メインはもちろん立ち飲みだ。酒屋が店を半分に仕切って立ち飲みをはじめたというから、さしずめ角打ちと言った方がピッタリくる。けっこうな人数が入れる。しかもそれがそこそこ混んでいるのだ。満員になることもあると聞いた。
安いのひと言に尽きる。酎ハイ、ハイボール400円、清酒360円、生ビール420円、瓶ビール(大瓶赤星)540円、どぶろく450円。電気ブランも泡盛もある。この店は酔うためにあるのだという主張が見て取れる。アテを書き並べたメニューなどというものはない。カウンターの上のネタケースに並べられたおばんざい、あるいは揚げ物や刺身を自分の目で見極めて注文する。その日のおすすめが書かれた小さな黒板がカウンターの向こうにぶら下げられている。何を食べても決して高くはない。大概400円から600円の範囲でOKだ。どうやら人気はコロッケ、とりから、ポテサラあたりだろうか。揚げ物だって出てくるまでにそんなに時間はかからない。
店の中をぐるっと見回す。若い女性の2人連れ。仕事帰りの労働者、サラリーマンなど客層は実に幅広い。さすがは駅前酒場といった感じだ。1人でふらっと入ってカウンターで飲(や)る。しばらくするとひとり客どうしあちこちで話が弾んでいる。いい風景だ。
よくある話だが、忙しくなると仕方のないことだが店員の愛想が悪くなりがちだ。が、ここはそんなことはなかった。愛想もご馳走のうちだと思った。サンクチュアリにふさわしい1軒だ。

居酒屋藤忠(ふじちゅう)
京都府京都市東山区本町12丁目221
土曜日・日曜日定休

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揺れて歩く人々の問い vol.91

あなたはトランプ大統領好きですか? 嫌いですか?

写真はロイターニュースから

多くを申しません。難しいことはいりません。印象でかまいません。好きですか? 嫌いですか?
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古藤只充さん
嫌い。コメディアンならこのキャラでもいいけど大統領はね😅
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Masako Fujiiさん
トランプと会談して「相性合う」と言うた石破は嫌い。
トランプはキャラが際立ってるとは思うけど一国束ねるべき人かは疑問。好き寄りの嫌いって感じかな。
でもあれだけの人数がトランプが良いって選んだんだもんね〜。
だって石破は「相性合うと、思います」やで。持って行った商売にトランプは食い付いただけや無いかいと。
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高山 富士子さん
大統領以前に人としてよくもまあ、こう言うのが育ってしまったもんだなと。そりゃ安倍夫妻と気があうわな。
しかしトランプ政治の下で亡くなる人、ひょっとしてガザよりも増えるんじゃないんか。アメリカ以外も含めて。マスクたち、トランプのオリガルヒも命より金だし恐ろしい。
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宮園 寛さん
理解を超えてて怖い、嫌いとかいう前に近寄りたくない。という訳にも行かない日本に住んでいますが。
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Chi-b Hasegawaさん
大嫌いです。毎日、まだ生きてるのかとガッカリするほど。
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今回コメントを寄せていただいた方、ありがとうございます。詳しくはこちらをどうぞ。
https://www.facebook.com/groups/1651099238372682/posts/3135313956617862
次回92回目の問いかけは、「大阪万博に興味ありますか? 見にいこうと思いますか?」です。〈揺れて歩く人々の対話テーブル〉でのご回答よろしくお願いします。
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しみてつコラム
『断絶』

岩吉の息子たち。左が名工”指徳”とうたわれた徳次郎

父が遺したメモと資料、写真を縁(よすが)に今流行りのファミリーヒストリーをたどってみた。ぼくはいつも自嘲を含めてだが、「わかっているだけで六代か七代続いた指物師の家業を断絶させてしまった」とあちこちで書き、話している。そのことをちゃんと裏付けておこうと思ったのだ。
鬼籍、過去帳を辿るとそう曾祖父つまり、四代前まで遡ることができた。四代前は岩吉という人で、この人は箱岩という屋号で箱物を主にした指物を手掛けていた。三代前徳次郎、ぼくの曾祖父になるが、この人は指徳(さしとく)と呼ばれた名工・名人で、箱岩とは別に化工堂(かこうどう)という屋号で、仕事の範囲を指物全般にひろげた。二代前祖父忠一はそれを受け継いで戦争の時代を乗り越えた先に父良一がいた。さらに父が遺した資料によると、岩吉の先には儀兵衛、儀助という人がいたようだ。儀助、儀兵衛、岩吉、徳次郎、忠一、良一という、江戸時代後期から京指物師の家系が続いたのだ。
資料はさらに義助が本家筋から独立した木工職人であることを示していた。ぼくは義助から数えて七代目にあたり、その先を数えると果てしない職人の系譜が浮かび上がるような気がした。それぞれ代々の人たちは、自分の代で家業を絶やさぬよう努力と苦労を重ねてきたはずだ。それが誇りとなり、職人の魂をさらに育て、その上に何代もの指物師の系譜が成り立ってきたのだ。ぼくがそれを断絶した。
ぼく自身祖父、祖母、父あるいは親戚筋の人々に多くの話を聞いてきた。それらをもとにして「化工堂と曾祖父清水徳次郎」という20枚ほどの文章を書いた。これを準備中の新刊「時間の隨(まにまに)」に収める予定だ。さらに深く調べ「月がとっても青いから」を超える単著を成立させたいと思っている。
それにしても、とぼくは思う。代々の人たちが家業を守るために続けてきた努力と苦労。それに見合うだけのことを家業を断絶したぼくがしているのかどうか……。それだけがぼくの懸念だ。
化工堂は平成10年良一の手によって看板が下ろされた。
「時代やなあ。徳次郎はんも堪忍してくれはるやろ」
母によると、最後の日に仕事場の片付けをしながら父良一はそうつぶやいたそうだ。

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体裁:B5変形横型(182mm×210mm)
ISBN:978-4909819086
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